東都に流れる、熱く爽やかな沖縄の風
沖縄初のプロ楽団、琉球交響楽団が、昨年に続いて東京公演を行う。琉球響は、元N響首席トランペット奏者・祖堅方正の先導で2001年にスタート。現在は創設以来深い関係を保つ名匠・大友直人が音楽監督を務めている。沖縄で活躍している音楽家が集う同楽団は、定期演奏会、音楽鑑賞会や式典演奏等々、20年にわたる活動を続けてきたが、昨年《はじめての東京公演》を開催。大友の指揮、辻井伸行のピアノで、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番や萩森英明の「沖縄交響歳時記」等を披露した。その演奏は、技術水準の高さと、大友の個性を反映した明るくしなやかで洗練味のあるサウンドが印象深く、むろん楽員の情熱も十分。終演後には盛大で温かな拍手が送られた。
沖縄復帰50周年を記念した今回は、大友の指揮にやはり辻井のピアノが加わり、ブラームスの「大学祝典序曲」、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番、そして本公演の意味を鑑みて、再び「沖縄交響歳時記」が演奏される。まずチャイコフスキーは文句なしの聴きもの。昨年のラフマニノフが辻井の中でも出色の快演だっただけに、今回もバックに触発されての名奏が期待される。「沖縄交響歳時記」は、沖縄の四季折々の風物、風景を詩情豊かに伝える全6楽章の大作。伝統音楽も用いた明快かつ色彩的な音楽で、精妙な管弦楽法を駆使して沖縄の魂をナチュラルに伝える佇まいが好ましい。それに何よりこれは「琉球響オリジナル」の稀少な生演奏。この機会にぜひ触れておきたい。
一同の熱い思いがこもった本公演。昨年聴けなかった方は、特にお見逃しなく!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2022年5月号より)
2022.6/3(金)19:00 サントリーホール
問:チケットスペース03-3234-9999
https://www.ints.co.jp