2022年4月からパシフィック フィルハーモニア東京に、飯森範親が音楽監督に就任
9月8日、東京芸術劇場において東京ニューシティ管弦楽団の新音楽監督並びに新楽団名称発表記者会見が行われた。会見には、2022年4月から音楽監督に就任する指揮者の飯森範親、同楽団理事長の日野洋一、専務理事 兼 楽団長の齋藤正志、コンサートマスターの執行(しぎょう)恒宏が出席した。
まず、2022年4月からの新名称について日野が説明。
「新楽団名は、『Pacific Philharmonia Tokyo(パシフィック フィルハーモニア東京)』です。 Pacific(平和・穏やか、太平洋)× Philharmonia(音楽を愛すること、調和)× Tokyo(東京)の 3つがキーワードです。太平洋、ひいては世界に向けて、音楽を通じて人と人のみならず国と国とを繋ぎ、平和と融合を音楽でもたらす(Pacify する)ミッションを持っていると考えます。今後、新しい音楽監督のもと、日本を代表するようなオーケストラに成長していきたい」
また、今後の方向性について日野は次のように語った。
「新しい取り組みを3つご紹介します。一点目は新しく音楽監督を迎え、これまで以上に楽団員の個性を発揮させ話題性のある公演をプロデュースし、東京の市民に愛され世界に誇れるオーケストラになること。二点目は、アカデミーを設立する計画をしていること。オーケストラのユースにあたるものだが、若い音楽家にクラシック音楽とともに日本の伝統文化・芸術を学ぶ機会を提供することが特色。三点目は、時代を超えて音楽の持つ価値を市民の皆さんと分かち合い、音楽を通じたコミュニティ形成をしていくこと」
続いてコンサートマスターの執行は飯森について、
「昨年、ブルックナーのシンフォニーで共演したときに、3日間のリハーサルを通して、オーケストラの音が劇的に変わっていくことを実感した。今後は、海外でも経験がある飯森さんと、各国の歴史や言語、景色のような色付けをしていけたらと期待している」と語った。
そして、飯森の音楽監督就任のあいさつ。
「当初、監督就任の話があったときには、もう四半世紀以上ご一緒していて自分にはなくてはならない存在のオーケストラ、東京交響楽団がありますので無理です、とお断りしました。しかし、昨年のコロナの自粛期間、自分がこういう時代の中でどういう風に指揮者として、音楽家として生きていけばいいのかということを考えました。そのときに再び齋藤楽団長からお話をいただき、日野理事長とも話を重ねました。そこで理事長から、自身が運営している令和アカデミー倶楽部(日本の文化を本質的かつ体系的に体験することで、知るを楽しみつつ日本人としての自覚や教養の修得を目指す文化講座)の音楽版をやりたいんだ、というお話をいただき、その言葉に深く共感しました。そして、理事長の『一人ひとりのお客様がパトロンであり応援団』という考えに賛同し、この人なら一緒にやれるという確信を持ちお引き受けしました」
2022年度は東京芸術劇場で7回、サントリーホールで2回、地元と言える練馬文化センターで1回の定期公演が予定されている。ゲストとして、世界的ヴァイオリニスト オーギュスタン・デュメイや、ユーチューバーとしても有名でこの秋のショパンコンクールにも出場する角野隼斗も出演予定。本邦初演の曲が3つ(メイソン・ベイツ、トーマス・アデス、イェルク・ヴィトマン)プログラムされていることも注目だ。
会見の終盤、飯森が先月新型コロナウイルスに感染したときの様子を語った。
「今年に入ってから28回PCR検査を受けていて、移動するたびに検査を行いマイナスを確認してから仕事をしていました。しかし残念ながら28回目に陽性が判明してしまった。当日も熱はまったくなく平熱でした。少し熱中症っぽいかなという感じはしたのですが、6月に同じく熱中症のような吐き気をもよおした時があり、その時もPCRは陰性で、今回はそこまでひどくありませんでした。しかし、その日の夜にメールで陽性の結果を見て驚きました。
その後、2日ほどは平熱だったのですが、3日後に激変しました。救急隊が来て、受け入れ先の病院を探すため1時間45分、電話をかけ続けてくれました。そして51件目に運良く受け入れてくれる病院が見つかりました。この救急隊員のお二人には本当に感謝しています。そして、入院後の検査では右の肺が白くなって肝臓の数値も良くなくて、レムデシベルとステロイドを投与されました。4日ほどで改善し5日目からは酸素吸入もなくなりました。入院は10日間でしたが、いつも12,000歩くらい歩いていたのが4,000歩くらいしか歩けなくなってしまった。
一つ申し上げたいのは、『自己責任で参加します』っていろいろな方がおっしゃいますが、自己責任では無理だと思う。そういう意識は捨てなければいけない。自分がかかると家族にも感染させてしまいます。幸い後遺症はありませんが、本当に気をつけなければならない病だと思いました」
東京ニューシティ管弦楽団
http://www.tnco.or.jp