鈴木雅明(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

名匠との共演によるベートーヴェン・シリーズ、遂に完結

鈴木雅明 (C)Marco Borggreve

 ベートーヴェン生誕250年の2020年はコロナで荒れた。流れてしまった企画も少なくない中、新日本フィルは昨年秋からのシーズンにベートーヴェンの交響曲全曲をプログラミングし、レパートリーの中核をなす巨大な峯の数々を粘り強く踏破してきた。その連続演奏企画がこの7月にめでたく完結する。しんがり公演を振るのは、いまや巨匠として世界的に名高い鈴木雅明だ。

 鈴木と言えば、バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)との規律が行き届いた清々しいバロック演奏が、世界中のバッハ・ファンから支持されてきた。東京藝術大学に古楽科を創設するなど、ピリオド演奏の先駆者としてのイメージが強いが、近年はモダン・オケにも積極的に客演しており、ニューヨーク・フィル、バイエルン放送響、ボストン響など、世界の超一流オケがこの古楽界のスターにラブコールを送ってきた。昨年はBCJとも「第九」や「ミサ曲 ハ長調」を取り上げて話題を呼んだばかり。まさに今回の企画を締めくくるにふさわしい。

 曲目は「英雄」と交響曲第4番。前者は新日本フィルが結成時(1972年)の特別演奏会で小澤征爾と演奏した演目でもあり、大切なレパートリーだ。ベートーヴェンが古典派の影響を脱し、交響曲の概念そのものに転機をもたらしたこの作品の歴史性を、鈴木のタクトがどう音として表現するかが気になるところだ。

 ところで、このシリーズでは弟の鈴木秀美が3月に「運命」と三重協奏曲を指揮しており、そちらを聴かれた方は、兄弟対決、両者の表現の違いを探ってみるのも面白いだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年7月号より)

定期演奏会 ルビー〈アフタヌーン コンサート・シリーズ〉第40回
2021.7/9(金)、7/10(土)各日14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 
https://www.njp.or.jp