明るく陽気な「南欧の音楽」で元気をチャージ!
ゴールデンウィーク期間中、金沢の街がクラシック音楽に染まる。「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2021」のテーマは「南欧の風」。イタリア、スペイン、フランスの音楽を中心に、バラエティに富んだプログラムが組まれた。
例年、ゴールデンウィークの金沢を舞台に多彩なコンサートが開催される「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭」。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大により中止になったものの、「秋の陣」として再構成された特別公演が実施された。そして、今年は例年通りの規模で開催が予定されている。音楽祭の核となる本公演は5月3日から5月5日にかけて。石川県立音楽堂と北國新聞赤羽ホールにて、短時間のプログラムを中心に40公演以上が行われる。音楽祭の今年のテーマは「南欧の風」。イタリア、スペイン、フランスで生まれた作品が主役となる。以下、ハイライトとなる公演についてご紹介しよう。
まずはオーケストラの公演から。関西から大阪フィルハーモニー交響楽団、兵庫芸術文化センター管弦楽団の両楽団を招き、これに石川県立音楽堂を本拠とする地元・オーケストラ・アンサンブル金沢が加わる。
なかでも注目されるのは秋山和慶指揮/大阪フィルによるレスピーギの「ローマ三部作」だろう。交響詩「ローマの噴水」「ローマの松」「ローマの祭り」の3曲が、それぞれラヴェルやファリャらの作品と組み合わされて、3公演にわたって演奏される[C5033、C5042、C5043]。レスピーギの色彩感豊かなオーケストレーションが聴きもの。特に「ローマの松」や「ローマの祭り」のような大規模な編成を要する楽曲は、現在のコロナ禍ではほとんど耳にする機会がなかった。久々に音の洪水に浸りたいという方も多いことだろう。
「南欧の風」がテーマとなれば、オペラも欠かせない。プッチーニの名作《蝶々夫人》ハイライトが田中祐子指揮/オーケストラ・アンサンブル金沢、腰越満美の蝶々さん、糸賀修平のピンカートンによって演奏される[C5044]。日本の長崎を舞台とした物語だけあって、数あるイタリア・オペラの傑作のなかでも、もっとも近づきやすい作品のひとつといっていいだろう。
イタリア・オペラの代表が《蝶々夫人》なら、フランス・オペラの代表は《カルメン》。鈴木織衛指揮/兵庫芸術文化センター管弦楽団が《カルメン》ハイライトを演奏する[C5054]。カルメン役に鳥木弥生、ホセ役に笛田博昭、ミカエラ役に木村綾子、エスカミリオ役に三戸大久が配される。《カルメン》は隅から隅まで名曲の宝庫。オペラ・ファンはもちろんのこと、オペラ入門者にも最適だろう。魔性の女カルメンが堅物ホセの運命を狂わせる。
さらに日本を代表する歌手陣が数多く出演する「オペラ・アリア紅白歌合戦!」[C5034]や、板倉康明指揮/兵庫芸術文化センター管弦楽団によるイタリア・オペラ序曲集[C5032]など、オペラから生まれた名曲を楽しむ公演も多い。また、竹本泰蔵指揮/兵庫芸術文化センター管弦楽団は「イタリア・フランス映画音楽特集」として、モリコーネ、ルグラン、ニーノ・ロータらの名曲を奏でる[C5052]。オペラの系譜に連なるエンタテインメントとして、映画音楽の魅力を再発見する機会になりそうだ。
この音楽祭では毎回、金沢ならではのプログラムも組まれている。会場のひとつが「邦楽ホール」であることからもわかるように、金沢は邦楽が盛んな土地柄だ。音楽祭の名物となっているのは、能舞とクラシックのコラボレーション。今回は能舞「アルルの女」が、渡邊荀之助、渡邊茂人、川瀬隆士の能舞、中村香耶のダンス、鈴木織衛指揮/ガルガン・アンサンブルにより上演される[H5041]。また、板倉康明指揮/オーケストラ・アンサンブル金沢の公演では、ヴィヴァルディの「四季」と合わせて、本條秀慈郎の三味線による柴田誠太郎作曲「三味線とオーケストラのための作り話」が初演される[H5033]。篳篥の東儀秀樹リサイタルや[AK5041]、純邦楽公演である「いしかわの邦楽」[H5042]、クラシック音楽を好んだ金沢生まれの文豪・徳田秋聲の生誕150年を記念した公演[K5033]も開かれるなど、随所に和の要素が取り入れられているのがおもしろい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2021年5月号より)
【information】
いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭 2021
会期:4/28(水)~5/5(水・祝)
本公演:5/3(月・祝)~5/5(水・祝)
会場:石川県立音楽堂、金沢歌劇座、北國新聞赤羽ホール、北陸エリア(福井・石川・富山)
問:いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭 実行委員会事務局076-232-8113
https://www.gargan.jp
※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。