エプソン、スマートグラスで字幕表示の実証実験

 新国立劇場、セイコーエプソン、電通国際情報サービス、Zimakuプラスは共同で、エプソンの新型スマートグラス「MOVERIO BT-200」を用いたシースルー字幕の実証実験を行った。
 「MOVERIO BT-200」はAndroid™4.0プラットホームを搭載したシースルータイプのメガネ型ヘッドマウントディスプレイで、映像や音楽、ウェブコンテンツを視聴できる。

左)MOVERIO BT-200を装着した様子。 右)MOVERIO BT-200
左)MOVERIO BT-200を装着した様子。 右)MOVERIO BT-200

 実験は2月28日から3月2日に新国立劇場・中劇場で上演された新国立劇場オペラ研修所公演《ナクソス島のアリアドネ》で行われ、Zimakuプラスがオペラの字幕制作と送出を担当、電通国際情報サービスがWi-Fiを利用したエリア限定型の配信プラットフォーム「potaVee」でオペラの舞台進行と連動した字幕情報を「MOVERIO BT-200」にリアルタイムで配信した。実験には劇場関係者や友の会会員など15人が参加した。
左)グラス中央よりの液晶部分に字幕が表示される。 右) 実証実験会場となった新国立劇場中劇場
左)グラス中央よりの液晶部分に字幕が表示される。 右)
実証実験会場となった新国立劇場中劇場

 イタリア語やドイツ語などの原語上演が一般的となった昨今のオペラを観劇する際、日本語字幕はオペラの内容を理解する上で欠かせないものとなっている。その一方で、字幕を見ることで、一瞬とはいえ舞台から視線を外さなくてはならず、オペラの世界に没入できないといった課題もあった。
 舞台上の好きなところを見ながら、同時に字幕も見ることのできるシースルー字幕は、その課題を解決するものとして期待されている。

 実際に試用してみると、88gとヘッドセットとしては軽量(従来モデルの約240グラムから軽量化を図った)ながら、3時間から5時間という長時間におよぶオペラ上演では、耳、鼻にかかる負担が大きいと感じられた。また、字幕表示部分の0.42型液晶パネルと周囲のグラス部分との明度差が気になったり、字幕の表示位置によっては、舞台の色や照明と混ざり見えにくくなる、などまだまだ開発の余地が多くあるように感じられた。

 それでも、視線を舞台に集中できる、メガネを装着していてもその上から簡単に装着できる、など利点も多く、また、今後開発が予定されているアプリを通じ、日本語のみならず諸外国語にも対応できるようになれば、多様な活用が望めるだろう。
 開発はまだ始まったばかりだ。今後のさらなる改良で、これまでにない、まったく新しい字幕サービスの展開を期待したい。

スマートグラスを通して見た舞台。中央の明度差が生じている部分が情報を表示する液晶部分。液晶部下部に字幕が表示されている。(写真は合成イメージ)
実際にスマートグラスを通して見た舞台を再現(写真は合成イメージ)。写真中央の明度差が生じている部分が情報を表示する液晶部分。液晶下部に字幕が表示されている。舞台左右にあるのが通常の字幕(2月27日に行われたゲネプロ(最終総稽古)で取材・撮影)

■エプソン MOVERIO
http://www.epson.jp/products/moverio/

■新国立劇場
http://www.nntt.jac.go.jp/

■電通国際情報サービス
http://www.isid.co.jp/

■Zimakuプラス
http://www.zimakuplus.jp/