京都市交響楽団が、11月20日に京都市内で記者発表会を行い、常任指揮者兼芸術顧問の広上淳一のほか、エグゼクティブプロデューサーの近藤保博、演奏事業部長の上野喜浩、管理部長の中濵正晃が登壇。2021年度のラインナップを発表した。また、14年にわたり常任指揮者を務める広上が、来季をもって退任することが併せて発表された。
シーズンは、広上がタクトを執るスプリング・コンサートで開幕する。ロシア・プロを組んだが、小曽根真がラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を初披露するとあって、話題を呼ぶのは必至(2021.4/11)。広上は、このほか定期演奏会では、尾高惇忠のヴァイオリン協奏曲の世界初演(独奏:米元響子)やグリーグ「ペール・ギュント」組曲を含むプロ(6/25)、第九コンサート(12/26)などの特別演奏会に登場する。定期演奏会の初回を飾るのは、首席客演指揮者就任披露演奏会が延期になっていたジョン・アクセルロッド。オール・ブラームス・プロを選んだ。海外組では、このほかトリスタン・ミュライユの作品(京響の委嘱作再演)を手がけるパスカル・ロフェ、ワーグナー・プロを振るクリスティアン・アルミンクら、充実の布陣が出揃った。また、京響はかねてより新作初演を積極的に行ってきたが、そうした歴史を継承するプログラムとして、伊達政宗の慶長遣欧使節を題材とした、ホセ・マリア・ガジャルド「セビリアの侍」が作曲者自身のギター独奏で披露されるのも注目だ(11/27, 11/28 指揮:アクセルロッド)。
一方、日本人指揮者については、「コロナを逆手に取って日本の若手指揮者を登用した。いきなり定期の場で勝負してもらう」と広上が語る通り、実績十分の鈴木優人、キリル・ペトレンコのアシスタントとしてベルリン・フィルで研鑽を積む沖澤のどか、海外・国内で進境著しい原田慶太楼、N響アシスタントを経て、昨今各オーケストラへの登壇も多い熊倉優など、若手注目株が定期演奏会を中心にズラリと並んだ。また、2019年のロン=ティボー=クレスパン国際コンクールで上位入賞した三浦謙司や務川慧悟、チャイコフスキー国際コンクール チェロ部門を制した弱冠20歳のズラトミール・ファンなど、ソリストも若手が主体となっている。
そして、2022年3月の広上の常任指揮者最終公演には、京響とは初、自身も25年ぶり2度目というマーラーの交響曲第3番を選んだ。「市民の皆さん、オーケストラのすべての方への感謝の気持ちを込めた」(広上)という長大な作品で、藤村実穂子(メゾソプラノ)をソリストに迎え、ラスト・ステージを華やかに終える(22.3/12, 3/13)。兼任している同楽団の本拠地、京都コンサートホール館長の任は引き続き務めるという。
「京響との出会いは、私の指揮者人生のなかで燦然と輝くかけがえのない宝。市民・行政・スタッフも含めすべての人々が私の人生を豊かなものにしてくれた。予想しなかったような化学反応が起きて、いまの京響がある」と感謝の言葉を述べた広上。「京響は世界へ躍進するスタートラインに立っている」と分析するが、退任を決意したのは「ひとつの時代が終わり、分岐点に差し掛かっていると感じたから」だという。今後は「このようなコロナ禍のなか、苦境に立つ日本中のオーケストラを応援する広告塔として活動し、若い音楽家を育てたい」と力強く語る姿には、これまで楽団と歩んだ歳月への充実感とともに、新たなステージへのエネルギーが満ちていた。
京都市交響楽団
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