滝 千春(ヴァイオリン) & 斎藤 龍(ピアノ)

ソナタ10曲を通してベートーヴェンに寄せる熱き思いを発信する

左:滝 千春 右:斎藤 龍
C)島崎信一
 今年のベートーヴェン生誕250年のメモリアルイヤーには、さまざまなベートーヴェンの作品を演奏するコンサートが企画されていたが、コロナ禍の影響で多くの演奏会が中止となった。しかし、ベートーヴェンを愛するアーティストたちはなんとか自身の演奏を形にしたいと努力し、その可能性を追求している。

 そのなかでヴァイオリニストの滝千春とピアニストの斎藤龍は、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏をライブストリーミングで発信することに決めた。

 ふたりは10年前、留学先のチューリッヒ芸術大学のコンクールでベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第1番を演奏して優勝し、以後ソナタ全曲演奏を目指して研鑽を積んでいる。滝は作品についてこう語る。

「ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは、ヴァイオリンとピアノが雄弁な音の対話を繰り広げ、ピアノはとても重要な役割を担います。斎藤さんはベートーヴェンを得意とし、ピアノ・ソナタ全曲演奏なども行い、作曲家を深く研究しています。理想のパートナーといえますね。全10曲ともそれぞれ個性があり、表現力も多様ですが、私は特に第6番の第2楽章に魅了されています。あまりにも美しいメロディに、つい涙があふれそうになります」

  一方、斎藤のベートーヴェン観は…。
「ベートーヴェンはピアノの名手でしたから、ピアノにとても多くのものを要求しています。各ソナタにベートーヴェンらしさが宿り、聴きどころはたくさんありますが、私は昔から第4番を愛しています。新しいものを求めるエネルギーがすごいからです。今回はヴァイオリニストとともにこうした新しさを追求し、独自の見解を示す演奏をしたいですね」

 理想のパートナーを得た彼らはじっくりリハーサルを行い、ベートーヴェンと対峙する。
「常に、楽譜を深く読み込むことが大切だと思います。演奏するたびにごくこまかな点に気づき、ピアノとのバランスも考える。ベートーヴェンは古典的な書き方をしていますが、そのなかに革新性が見えます」
斎藤「これらのヴァイオリン・ソナタはいずれも時代を先取りし、冒険心に満ちています。主題や変奏、和声、強弱の変化、リズムの変容などありとあらゆる冒険をしている。生涯探求し続けたい作曲家です」

 ベートーヴェンの誕生月に行われる配信。滝と斎藤のベートーヴェンに寄せる熱き思いをそのデュオから聴き取りたい。
取材・文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2020年12月号より)

【動画配信】滝 千春 × 斎藤 龍「ベートーヴェンウィーク」 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全曲
2020.12/14(月)〜12/18(金)各日20:00 PIA LIVE STREAM(アーカイブ配信有)
※配信日により曲目が異なります。
問:Beethoven Project実行委員会050-3634-4632 
https://www.ryusaito.com