新鋭指揮者と人気ヴァイオリニストが描き出す20世紀音楽の傑作
リオネル・ブランギエは18歳でブザンソン国際指揮者コンクールに優勝、2014/15シーズンからはデイヴィッド・ジンマンの後任として名門チューリッヒ・トーンハレ管の首席指揮者・音楽監督を務める30代トップ指揮者の一人である。昨年秋の東響定期初登場は同楽団のフロントが7年半ラブ・コールを送りようやく実現したコンサートだった。1年置いての再登場は、ブランギエの才能や楽団との相性が予想にたがわぬものだったことを示している。
プログラミングもうまい。ハンガリーの民族派で盟友でもあったコダーイとバルトークの「管弦楽のための協奏曲」を並べた。戦争開始前後に作曲されたコダーイ作品はオーケストラのダイナミズムがたっぷりと味わえる佳作で、一方、亡命先のアメリカで終戦直前に初演されたバルトーク作品はゴージャスな語り口の中にモダンな音楽語法がちりばめられている。各パートそれぞれに高い技術が求められるオケ・コン2曲という選曲は、同時にブランギエから東響への挑戦状でもあるのだろう。奮起したオケの怪演が期待できそうだ。
間に挟まれるショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲第1番」は戦争直後に作曲されている点でも相性がよく、協奏曲ばかりだが実はどれも交響曲的なのもブランギエの隠れた意図かもしれない。
そしてそして…ソリストのアリーナ・イブラギモヴァにも大注目だ。最新盤では同曲を凄まじい集中力で弾き切り、圧倒的な名演を聴かせている。あの興奮がサントリーホールで味わえるなんて、考えるだけでゾクゾクするではないか。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2020年9月号より)
第683回 定期演奏会
2020.9/26(土)18:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
https://tokyosymphony.jp
*新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に伴う海外からの入国制限措置により、リオネル・ブランギエ、アリーナ・イブラギモヴァの来日の見通しが立たないことから、下記のとおり出演者、曲目を一部変更して開催することとなりました。(9/2主催者発表)
詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。
指揮:尾高忠明
ヴァイオリン:川久保賜紀
リャードフ:交響詩「魔法にかけられた湖」op.62
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 イ短調 op.77
バルトーク:管弦楽のための協奏曲 Sz.116