アレッシオ・アレグリーニ(ホルン)

テクニックと歌心を持ち合わせた達人の音色に酔う

C)Priska Ketterer

 イタリア人ホルニスト、アレッシオ・アレグリーニは知る人ぞ知るヴェテランだ。プラハの春国際(1997年、優勝)、ミュンヘン国際(99年、最高位)の各コンクールで世界にその名を轟かした当時、すでにスカラ座管の首席の座にあり、その後はベルリン・フィルの首席客演奏者も務めている。アバドの信頼も厚く、ルツェルン祝祭管など彼の率いるオケでは幾度となく大役を任された。一流指揮者がラブコールを送るのは、ずば抜けた技術に加えオケの要となるホルン・パートを的確にまとめる力量ゆえだろう。近年、指揮で成果を収めているのもうなずける。

 そんな名手が日本初のリサイタルを開く。プログラムも多彩だ。素朴で生き生きとしたケルビーニのソナタ第2番。ミュンヘンの宮廷歌劇場のホルニストを父に持つR.シュトラウスのホルン協奏曲第1番は、10代後半とは思えぬ早熟ぶりを発揮した名作だ。ロッシーニらしいウィットとユーモアの効いた「前奏曲、主題と変奏」を経て、モーツァルトの「ピアノと木管のための五重奏曲 K.452」で結ぶ。

 ピアノは村田千佳。トッパンホールではおなじみで、これまでに多くの名奏者を支えてきた。モーツァルトに登場する青山聖樹(オーボエ、N響)、金子平(クラリネット、読響)、水谷上総(ファゴット、N響)はいずれも日本を代表する実力者だ。

 軽々とした音の跳躍、流れるレガート、確かな技量を通じてあふれ出る遊び心と歌心、そしてアンサンブルをまとめ上げる総合力。日本では未だ知られざる名手が、その魅力を余すところなく開陳する。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2020年5月号より)

*新型コロナウィルス感染症の感染拡大を考慮し、本公演は中止となりました。(5/7主催者発表)
振替公演についての詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。

2020.5/26(火)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
https://www.toppanhall.com