アレクサンドル・ラザレフ(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

秘曲オペラなど、若きラフマニノフの傑作2編を強力な布陣で一挙演奏


 日本フィルの指揮台に、今年もアレクサンドル・ラザレフがやってくる。毎回猛烈なリハーサルを重ねてオーケストラから強靭な響きを引き出し、聴衆の興奮を誘うラザレフ。昨年からは定期演奏会でオペラ(演奏会形式)という新機軸を打ち出し、かつてボリショイ劇場の芸術監督を務めたラザレフによるオペラの名演が体験できるようになった。

 この5月定期はラフマニノフ・プロだが、10代で書いた2作品という珍しい組み合わせ。まず、わずか17歳でのピアノ協奏曲第1番。現行版は44歳の年に改訂したもので、粗削りな若々しさと洗練された彫琢が同居した魅力作である。世界的に活躍する名手、小川典子の力強く美しいピアノで本作を聴けるのは貴重そのもの。

 さらに注目を集めるのが、歌劇《アレコ》。19歳、モスクワ音楽院の卒業作だが、すでにオーケストレーションは卓越しており、数々の美しいアリアに舞曲や間奏曲などオペラとしての聴きどころも十分。ラフマニノフの天才を示す出世作にして快作だ。ストーリーは妻の裏切りに悩む主人公アレコが妻とその愛人を殺してしまうというもので、ラザレフは昨年のマスカーニ《カヴァレリア・ルスティカーナ》以上に、その愛憎を壮烈かつ劇的に聴かせてくれるはず。歌手も、ラザレフがボリショイ劇場デビューに導いたニコライ・エフレーモフ(バリトン)が主役を務め、安藤赴美子(ソプラノ)、大槻孝志 (テノール)ほか、日本人歌手も全員主役級の贅沢な布陣。待望のラザレフのロシア・オペラ、その真髄を体験しない手はない。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2020年4月号より)

*新型コロナウィルス感染症の感染拡大を考慮し、本公演は中止となりました。(4/16主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。

第720回 東京定期演奏会 
2020.5/15(金)19:00、5/16(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
https://www.japanphil.or.jp