第10回大阪国際室内楽コンクール&フェスタが開催

 『音楽の原点』とも言われる室内楽に取り組む優秀な音楽家を世界に広く求め、「国際音楽コンクール世界連盟」の基準に基づき優れた演奏家を顕彰、育成する「大阪国際室内楽コンクール」(主催:日本室内楽振興財団、3年ごとに開催)が5月15日から22日にかけて大阪・住友生命いずみホールを主会場に開催される。あわせて、年齢制限や課題曲がなく、楽器の組み合わせが自由な「大阪国際室内楽フェスタ」も同時開催される。去る3月5日、開催記者発表が行われた。
(2020.3/5 大阪市内 取材・文・撮影:寺司正彦)

左より:牧野立太(運営委員長)、梅本俊和(フェスタ審査員長)、堤 剛(コンクール審査委員長)、森 詳介(会長)、伝川 幹(副会長)

 第10回の節目となる今開催について、森詳介会長は「最大限の努力を傾注し、大阪の文化ひいては世界の文化の発展に貢献していく」と述べた。

 「コンクール」は、第1部門の弦楽四重奏に加え、第2部門としてピアノ三重奏とピアノ四重奏が審査対象となる。とくに第1部門では生誕250年を迎えるベートーヴェンの弦楽四重奏曲と、望月京への委嘱作が課題曲となる。世界18ヵ国・地域から49団体(第1部門:21団体、第2部門:28団体)の応募があり、予備審査を通過した20団体が1次予選に参加する。
 審査委員長の堤剛は「第10回の記念の年にふさわしい、ハイレベルな参加者となった。新型コロナウイルス感染症の影響により、各所で中止・延期の措置がとられているが、本コンクールは東日本大震災のときも力強く乗り越え、海外からの評価も益々高まった経験がある。国際音楽コンクール世界連盟が5月に、日本で初めてとなる総会を開催する。関係者の多くがコンクールを視察されると聞いている。ベストを尽くし、盛り上げていきたい」と語った。
 国別では第1部門がアメリカ4、日本3、ヨーロッパ3団体、第2部門がヨーロッパ7、アメリカ2、日本1団体。ピアノ四重奏での参加はイタリアの1団体のみとなった。これについて堤は、「第1部門の弦楽四重奏に、日本からはこれまでで最も多い3団体が参加する。教育機関での室内楽に対する取り組みや、大阪国際室内楽コンクールを目指し切磋琢磨する気運の高まりを感じている」と感想を述べた。

堤 剛(コンクール審査委員長)

 新たな試みにも取り組む。その一つ、第1回から第3回の優勝団体メンバーのなかから審査委員を招聘することについて堤は「多くのコンクールが同様のことを行っているが、それぞれのコンクールの特徴というものもある。音楽は人と人とのつながり。過去を受けてまた新しいものを生み出す。さらに歴史を積み重ねていきたいという思いがある。聴いていただくお客様も、あの時の優勝団体のあの人が委員なんだ、ということで、よりコンクールに親しみを持っていただけるのではないか」と期待感を示した。
 また、受賞者の活動を支援するため今大会から「クワチュオール・ア・ボルドー」「ストリング・クァルテット・ビエンナーレ・アムステルダム」と提携、第1部門に参加した団体のうち1団体がそれぞれのフェスティバルに招聘(アムステルダムは第1位の団体)される。あわせて本コンクールでもボルドー国際弦楽四重奏コンクール2019の優勝者を今年6月に招聘する。
 このほか、課題曲として望月京に弦楽四重奏曲を委嘱、プレ・イベントとして過去の入賞団体によるコンサートシリーズ「世界をリードする弦楽四重奏の饗宴」を開催する。

 「フェスタ」は、2人から6人までの編成で、年齢制限はなく、楽器編成は自由。各国の伝統音楽、民族音楽の楽器を使用する団体も参加可能で、事前に公募した各会場100名の一般審査員(応募〆切:3/17(火)必着)による聴衆審査を最大の特徴とする世界的にも類を見ないユニークなコンクール。今回は世界26ヵ国・地域から77団体の応募があり、18団体が1次ラウンドに進む。新たな取り組みとして地方との連動を図るため、フェスタの第1ラウンドを富山と三重で行う。

 開催への新型コロナウイルス感染症の影響について牧野立太運営委員長は、「5月の開催に向けて粛々と準備を進める。参加者も審査員も海外の方が中心。はたして日本に来られるのか。状況を注視しながら、どのような開催ができるのか、適宜対応しつつ開催を模索していく。あるいは無観客での実施もありうる」と述べた。

 前回に続き審査委員によるスペシャルコンサート「珠玉の室内楽選」が開催される。審査委員長の堤剛(チェロ)、審査委員のエッカルト・ハイリガーズ(ピアノ、第1回コンクール第1位)、モニカ・ヘンシェル(ヴィオラ、第2回コンクール弦楽四重奏部門第1位)らに、第2回コンクール弦楽四重奏部門第2位のクァルテット・エクセルシオが加わり、シューマンのピアノ五重奏曲、ベートーヴェンの弦楽五重奏曲、メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲を披露する。

 コンクール&フェスタの模様は全演奏(スペシャルコンサートを除く)がライブストリーミングで世界に同時配信される。後日アーカイヴでも配信する。


●第10回 大阪国際室内楽コンクール
2020.5/15(金)〜19(火)、5/21(木)、5/22(金) 住友生命いずみホール

(披露演奏会:5/24(日)住友生命いずみホール、5/25 (月)サントリーホール ブルーローズ)

●第10回 大阪国際室内楽フェスタ
2020.5/17(日) 富山県高岡文化ホール、三重県文化会館(中)
5/20(水)住友生命いずみホール

(披露演奏会:5/24(日)住友生命いずみホール)

予選: 全席自由:1,000円(前売800円、シニア(60歳以上)および学生:500円)
本選: 全席自由:2,000円(前売1,500円、シニア(60歳以上)および学生:1,000円)
披露演奏会
 大阪:全席指定:3,000円(前売2,000円、シニア(60歳以上)および学生:1,500円)
 東京:全席指定:2,000円
3/16(月)発売

●第10回大阪国際室内楽コンクール&フェスタ スペシャル・コンサート
〜珠玉の室内楽選〜大阪に集う 世界の泰斗
2020.5/23(土)14:00 住友生命いずみホール
3/16(月)発売

●第10回大阪国際室内楽コンクール&フェスタ2020 プレイベント
世界をリードする弦楽四重奏の饗宴 Vol.5 アタッカ・クァルテット
2020.4/11(土)15:00 あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール

●大阪国際室内楽コンクール×ボルドー国際弦楽四重奏コンクール提携企画
マルメン弦楽四重奏団
2020.6/26(金)19:00 あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール
3/16(月)発売

問:日本室内楽振興財団06‐6947‐2184
http://www.jcmf.or.jp/compefesta2020/