大野和士(指揮) 東京都交響楽団

還暦のシェフが贈るブリテン異色の大作とフランス管弦楽の名品


 大野和士は近現代の「もっと聴かれるべき名曲」の紹介に執念を燃やし、私たちの耳を開いてきた。イギリスの大家ベンジャミン・ブリテンも「戦争レクイエム」をはじめ積極的に取り上げてきたが、都響3月定期には作曲家35歳時の大作「春の交響曲」が登場する。

 1948年から二年がかりで書かれた本作は、中世から20世紀に至るイギリスの詩人の春についての詩を集め、4部12曲にまとめたものだ。交響曲と銘打ってはいるが、独唱・合唱・少年合唱を含む大規模な声楽曲で、春の訪れを告げる生命の息吹に始まり、夏の到来を讃える爆発的な歓喜へと至る。終楽章の角笛に導かれた巨大なカノンが壮観だ。

 戦争の惨禍と新時代の訪れという曲の精神を正しく伝えるには、何よりパワフルな歌が不可欠だ。中村恵理(ソプラノ)、清水華澄(メゾソプラノ)という日本を代表する女声陣に、北欧系テノールのトピ・レティプーが加わる。貴公子然としたいで立ちで欧州オペラ界で人気を集めているレティプーにも注目したい。合唱には大野自らが芸術監督を務める新国立劇場合唱団、さらに東京少年少女合唱隊というトップ団体を惜しげもなく投入し、鉄壁の布陣で臨む。

 前半はベルリオーズの快活な《ベアトリスとベネディクト》序曲、ドビュッシーの舞踊詩「遊戯」と、フランス近現代の作品を集めた。作曲家晩年の「遊戯」は、より抽象的な表現世界を切り開いたとして、戦後の前衛作曲家たちから高い評価を得た音楽だ。ブリテン作品とともに、20世紀前半の管弦楽芸術の広がりと豊かさを体感してほしい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2020年2月号より)

第897回 定期演奏会Bシリーズ 
2020.3/4(水)19:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057 
https://www.tmso.or.jp

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