響きの森クラシック・シリーズ 2020-2021シーズン 小林研一郎(指揮) オール・ベートーヴェン・プログラム

炎のマエストロと旬のソリスト陣によるベートーヴェンをたっぷり堪能

 文京区と東京フィルハーモニー交響楽団は事業提携を結び、2002年から「響きの森クラシック・シリーズ」と題して、文京シビックホールで年4回の公演を行っている。

東京フィルハーモニー交響楽団
C)K.Miura

 日本で最も長い歴史を誇る東京フィルと一流指揮者による演奏を、リーズナブルな価格で楽しめるとあって、ほぼ毎回完売の人気シリーズになっている。土曜日午後3時という開演時間も好評のようだ。来年がベートーヴェン生誕250年という記念の年であることから、2020-21シーズンは、オール・ベートーヴェン・プログラムで開催されることになった。

 プログラムは、協奏曲と交響曲が組み合わされる。第1回(Vol.72)は、ヴァイオリン協奏曲と交響曲第7番(2020.6/6)。第2回(Vol.73)は、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」と交響曲第6番「田園」(9/5)。第3回(Vol.74)は、ピアノ協奏曲第3番と交響曲第5番「運命」(11/28)。第4回(Vol.75)は、劇音楽「エグモント」序曲と交響曲第9番「合唱付」が演奏される(2021. 3/27)。

 指揮は、シリーズの顔とも言うべき小林研一郎が務める。最近聴いた小林のベートーヴェンは、重心が低く分厚い響きがあり、大河が流れるようにスケールが大きな演奏だった。その指揮は巨匠と呼ぶにふさわしい風格があった。今回も、“これぞベートーヴェン”という雄大な演奏を聴かせてくれることだろう。

左より:小林研一郎 C)K.Miura/戸澤采紀 C)SmileStyleStudio/小林亜矢乃 C)Hiromi Uchida/小山実稚恵 C)Hiromichi Uchida

 ソリストは豪華な顔ぶれが並ぶ。ヴァイオリン協奏曲は、日本音楽コンクールに史上最年少の15歳で優勝するなど、これまでに数々のコンクールで入賞を果たしている戸澤采紀が弾く。両親ともヴァイオリニストという恵まれた環境に育ち、まだ東京藝大の1年生という若さだが、今最も話題を集めている旬のアーティストの一人だ。

 ピアノ協奏曲第5番「皇帝」は、小林亜矢乃がソリストとして登場する。イタリアAMAカラブリア国際ピアノコンクールで第2位など、多数の国際コンクールで上位入賞を果たし、国内の主要オーケストラはもとより、ネーデルラント・フィル、ハンガリー国立フィル、チェコ・フィルとも共演するなど、国際的にも活躍している。小林研一郎の長女でもあり、親子ならではの心が通い合った共演が楽しみだ。

 ピアノ協奏曲第3番は、人気、実力ともに日本を代表するピアニストの小山実稚恵が弾く。チャイコフスキー国際コンクール、ショパン国際ピアノコンクールの二大コンクールに入賞以来、常に第一線で活躍している。ソリストとして国内のオーケストラはもちろん、モスクワ放送響、ベルリン響、ロイヤル・フィル、ワルシャワ・フィルなど世界の名門オーケストラや、フェドセーエフ、テミルカーノフ、小澤征爾といった国際的指揮者と共演を重ねてきた。小林研一郎との共演も数多く、息の合った名演への期待がふくらむ。

左より:小林沙羅 C)NIPPON COLUMBIA/清水華澄 C)Takehiko Matsumoto/西村 悟 C)Yoshinobu Fukaya(aura)/大西宇宙 C)Dario Acosta

 交響曲第9番「合唱付」では、小林沙羅(ソプラノ)、清水華澄(メゾソプラノ)、西村悟(テノール)、大西宇宙(バリトン)という、それぞれのパートで、今人気ナンバーワンとも言える歌手が一堂に会する。合唱は、東京藝術大学音楽学部声楽科の学生たち。数多くの名歌手を生んだ伝統ある学科の若さ溢れる合唱と、勢いのあるソリスト4人の共演は、作品に新たな光を与えてくれるに違いない。

 来シーズンの「響きの森クラシック・シリーズ」は、メモリアル・イヤーに、ベートーヴェンの魅力を余すことなく味わうことができる絶好の機会となることだろう。お得なシリーズセット券も用意されている。
文:長谷川京介
(ぶらあぼ2019年12月号より)

Vol.72 2020.6/6(土) 
Vol.73 9/5(土)
Vol.74 11/28(土) 
Vol.75 2021.3/27(土)
各日15:00 文京シビックホール 
シリーズセット券 2019.12/15(日)発売
問:シビックチケット03-5803-1111
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