第17回ヘンデル・フェスティバル・ジャパン ヘンデル:オラトリオ「ヨシュア」(演奏会形式)

イスラエルの民を約束の地へと導く壮大な物語を描いた傑作


 上演機会の少ないオラトリオ「ヨシュア」(1747作曲、翌年初演)を生で聴ける機会がやってきた。

 指導者モーセはエジプトからイスラエルの民を救い出し、民族の故郷カナンを目指すも道半ばで他界した。ヨシュアはその遺志を継いで民を導き、道を阻む敵を次々に撃退してついに帰還を果たす。筋からして派手な戦闘シーンや華やかな祝勝の場が聴きどころとなる。エリコではラッパの音とともに城壁が崩れ、ギブオンでは太陽が中空に止まる奇蹟に乗じて敵陣を攻略する。祝勝の合唱「見よ、勇者は還る!」(表彰式の曲)は、後に「ユダス・マカベウス」に移植され、そちらの方が有名になった。

 武将オトニエルと恋人アクサの物語がドラマに膨らみを加えているが、彼らは聖書の別の箇所(士師記)の人物で、聖書を知る人は唐突に感じるかもしれない。実はこの頃女帝マリア・テレジアの即位に端を発したオーストリア継承戦争(1740〜48)が大詰めを迎えていた。戦勝を賛美し軍人が恋人と結ばれる台本からは、軍事介入を強めれば英国有利の講和条件を引き出せる、という好戦派の政治的主張を読み取ることができる。

 ヘンデル・フェスティバル・ジャパンは「メサイア」一辺倒の日本の現状を打破すべく多様な作品の上演を目指してきた団体。三澤寿喜指揮のもと、辻裕久、広瀬奈緒、波多野睦美などこの分野を代表する歌手陣や器楽奏者たちが揃った。曲のカットや編成の改変をしない原作に忠実な演奏に特色があり、12月には作品の魅力を事前に紹介する講演会も開かれる。
文:三ヶ尻 正
(ぶらあぼ2019年12月号より)

講演会「『ヨシュア』の魅力」 
2019.12/21(土)14:00 池上ルーテル教会

コンサート 
2020.1/25(土)15:30 浜離宮朝日ホール
問:HFJ事務局0297-82-7392 
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