マーティン・ブラビンズ(指揮) 東京都交響楽団

“イギリス音楽の伝道師”の面目躍如たる好プログラム


 イングリッシュ・ナショナル・オペラの音楽監督をはじめ、世界の有名歌劇場に客演しているマーティン・ブラビンズだが、日本では何といってもイギリス音楽の伝道師として知られる。都響への客演でも数多くの名曲を届けてくれたが、1月B定期では作曲家たちが身近な人々に向けた親愛なる音のあいさつを集めた、とっておきのプログラムが聴ける。

 ラヴェル「クープランの墓」は典雅なバロック組曲の形式を借りたクープランへのオマージュだが、6つの楽章のそれぞれは第一次大戦に従軍し命を落とした友人たちに捧げられている。このフランスの佳品は、後半に置かれたエルガーの「エニグマ(謎)変奏曲」と響きあう。自作の主題に基づく14の変奏曲は、それぞれがエルガーの身の回りの人物の特徴を捉えたポートレイトにもなっているのである。各変奏に付されたタイトルやイニシャルに、人物を特定するヒントが隠れている。とりわけ有名な「ニムロッド」(第9変奏)は、楽譜出版社に勤めていた知人にエルガーが付けたあだ名である。

 間に挟まれるのが、日本初演となるジェイムズ・マクミランの「トロンボーン協奏曲」(2016)だ。ダイナミズムや娯楽性を程よく備えたイギリス現代音楽は世界を席捲中だが、マクミランもそうしたムーヴメントを担う一人。孫娘の死をきっかけに作曲された本作は、トロンボーンのグリッサンドが儚い哀歌を呼び出だす。独奏のヨルゲン・ファン・ライエンはロイヤル・コンセルトヘボウ管の首席を務める名手で、本作をはじめ多くの初演を任されてきた手練れだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年12月号より)

第895回 定期演奏会Bシリーズ 
2020.1/16(木)19:00 サントリーホール 
問:都響ガイド0570-056-057 
https://www.tmso.or.jp/

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