クァルテット・エクセルシオ(弦楽四重奏団)

弦とハープ、オーボエの織り成す色彩的空間に包まれる

左より:吉田有紀子、北見春菜、西野ゆか、大友 肇
 紀尾井ホールで行われる「Quartet Plus(クァルテット プラス)」は弦楽四重奏に留まらない室内楽の新しい魅力を伝えてくれるコンサート・シリーズだ。今回は、結成25周年という節目の年を迎えたクァルテット・エクセルシオが、オーボエの吉井瑞穂、ハープの景山梨乃と共演する。

 「お二人とは初めての共演。しかも、オーボエとハープと弦楽四重奏のための作品など、普段はなかなか聴くことのできない作品が多く、我々にとっても興味深いコンサートになりそうです」と語る大友肇(チェロ)。ドビュッシーの友人でもあった作曲家カプレの「エドガー・アラン・ポーの『赤死病の仮面』によるハープと弦楽四重奏のための『幻想的な物語』」に始まり、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第10番「ハープ」、モーツァルトの「オーボエ五重奏曲ハ短調」(原曲:弦楽五重奏曲第2番)、ドビュッシーの「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」、そしてチェコの作曲家クヴィエシュ(1950〜2018)の「オーボエ、ハープと弦楽四重奏のための六重奏曲『フルビーン変奏曲』」と、いまここでしか聴けない作品が並ぶ。古典だけでなく、現代曲も数多く演奏してきた経験のある彼らだからこそ可能なプログラムとも言えるだろう。

 「これまでの経験では、弦楽四重奏にハープが加わることによって様々な色づけが可能になるのです。繊細なだけでなく、ハープはパワフルな音も出せるので、全体を包み込んでくれるようなところも出てくる。弦楽四重奏とハープの音がブレンドされるところを楽しんでいただきたいです」と西野ゆか(ヴァイオリン)。オーボエが弦楽五重奏の第1ヴァイオリンのパートを演奏するモーツァルトも実演ではほとんど耳にすることのない作品で、マーラー室内管などで活躍する吉井とクァルテット・エクセルシオの音楽的なやりとりが楽しみである。そのプログラムの中に置かれたベートーヴェンの「ハープ」がどんな風に聴こえてくるのかにも注目したい。

 同クァルテットに今年加入した北見春菜(ヴァイオリン)は、「3人に追いつくのは大変ですが、必死に追いかけつつも、本番での演奏は楽しみながらやっています。お客様にも、それが伝われば良いなと思います」と抱負を述べる。室内楽に最適の音響を持つ紀尾井ホールで、弦楽四重奏とオーボエとハープの共演をじっくりと楽しみたい。そこには、これまで知らなかった世界が待っている。
取材・文:片桐卓也
(ぶらあぼ2019年11月号より)

クァルテット・エクセルシオ + 吉井瑞穂(オーボエ) & 景山梨乃(ハープ)
2019.12/12(木)19:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 
http://www.kioi-hall.or.jp/