マーラーの心の中にある“夜”の情景を描き出す
メッツマッハーとハーディングというヨーロッパを湧かせる気鋭の2人による指揮者体制となった新日本フィルハーモニー交響楽団。これからの音楽的な充実に期待が高まっている。そんな中、ハーディングが再びマーラーを取り上げる。今年はすでに第6番を指揮したが、今回は第7番。いわゆる「夜の歌」のサブタイトルで知られる交響曲である。
1905年に完成した第7番は全5楽章だが、その第2、第4楽章にマーラーは「夜曲」というサブタイトルを付けた。ギター、マンドリン、そしてテノール・ホルンというオーケストラではあまり使われない珍しい楽器が編成に加わっているのもユニークな点である。第5番〜第7番は声楽の入らない、器楽による交響曲なのだが、その中で第7番は、最も複雑で、繊細な作品ともいえるだろう。
ハーディングは若い頃からマーラーの交響曲に親しんできた。アバドに認められて、マーラー・チェンバー・オーケストラを中心に活躍し、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団でのデビューもマーラーの交響曲(第10番)を指揮している。マーラー作品への理解、解釈の深さでは同時代の指揮者の中では一歩抜きん出ていると思う。新日本フィルともマーラーの交響曲の演奏会を積み上げて来た。この第7番でも両者の息のあった演奏が期待できる。マーラーの楽譜の奥に入り込み、その心の中にある“夜”の情景を描き出す。作品の真実に触れようとするハーディングの指揮に注目だ。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ2013年11月号から)
第517回定期演奏会
トリフォニー・シリーズ
★11月8日(金)、9日(土)
・すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス
03-5610-3815
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ローチケLコード31817