シェイクスピアの原作を鮮烈なサウンドで表現
「わしをどれほど愛しているか言ってみろ」…3人の娘に王国を委譲することにしたブリテン王・リアは、自分の発した愚かな問いが原因で国を追われ、荒野をさまよい絶望の果てに狂死する。原作はシェイクスピアの悲劇『リア王』。ヴェルディも果たせなかったそのオペラ化を実現したのが、日生劇場開場50周年記念「特別公演」で日本初演されるアリベルト・ライマン作曲《リア》だ。1978年ミュンヘンにてフィッシャー=ディースカウ主演で世界初演され、今日に至るまで再演の絶えない名作である。
5幕からなる原作の物語は2部11場に集約され、リアが破滅するプロセスがシュプレヒゲザング(言葉の抑揚を活かした朗唱)と巨大な管弦楽を駆使して描かれる。娘たちへの問いに始まる冒頭から息もつかせぬ展開で、荒野で叫ぶリアの狂気、コーディリアの死体を抱いて現れたリア最期のモノローグなど見どころが多く、咆哮する金管楽器と多彩な打楽器による激烈な音楽も迫力満点。12音とトーン・クラスター(音塊)を用いた5つの幕間音楽も聴きどころで、管弦楽ファンにもお薦めだ。11月の日本初演は栗山民也の演出、昨年《メデア》を成功に導いた下野竜也の指揮と読売日本交響楽団のコンビで行われる。歌手は東京二期会が総力を結集してのダブルキャストで、リア役は小森輝彦(11/8,11/10)と小鉄和広(11/9)が演じる。現代作品は難しいとの先入観を捨てて観劇すれば、深い感銘を受けることだろう。お見逃しなく!
文:水谷章良
(ぶらあぼ2013年11月号から)
★11月8日(金)、9日(土)、10日(日)
・日生劇場
問:日生劇場03-3503-3111
http://www.nissaytheatre.or.jp
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