2018年3月に読響と初共演が予定されていながら、病気でキャンセルとなったヘンリク・ナナシが、ようやくこの7月に読響の指揮台に立つ。「ナナシ」というなじみの薄い姓に「どこの人だろう」と首をかしげる方も多いかもしれないが、出身はハンガリーだ。バルトーク音楽院で作曲とピアノを学び、ロイヤル・オペラでアントニオ・パッパーノのアシスタントを務めた後、めきめきと頭角をあらわし、ベルリン・コーミッシェ・オーパー音楽総監督を務めるなど、華々しい活躍をくりひろげている。
今回の読響との共演にあたっては、ナナシの“お国もの”となるコダーイの「ガランタ舞曲」、バルトークの「管弦楽のための協奏曲」が選ばれた。ともにハンガリー民謡と20世紀前半のモダニズムが融合した傑作であり、オーケストラの高い機能性が求められる作品でもある。いわば、土の香りのするスペクタクル。ナナシと読響の化学反応に注目したい。
また、サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」では、リュカ・ドゥバルグがソロを務める。2015年のチャイコフスキー国際コンクールで、優勝候補の筆頭と目されながらも4位に終わったが、異彩を放つ演奏でギャラリーを沸かした“鬼才”である。
アフリカをくりかえし訪れた大旅行家サン=サーンスは、パリの寒さを逃れて向かったエジプトでこの曲を書いた。エキゾチックなメロディが奏でられ、旅情をかきたてる。ドゥバルグのピアノはどんな旅の光景を見せてくれるのだろうか。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2019年7月号より)
第590回 定期演奏会
2019.7/11(木)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
https://yomikyo.or.jp/