地元市民とともに成長を重ねてきた音楽祭が今年も華やかに開幕
調布国際音楽祭が今年で7年目を迎える。バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)を中核に、世界的なアーティストから調布市民まで幅広い人々が参加する音楽祭として独特の存在感を放っている。今年も多彩なプログラムが用意されたが、その特徴をエグゼクティブ・プロデューサーである鈴木優人に聞いた。
「昨年、モーツァルトのオペラを演奏会形式で上演したのですが、客席の反応がとても良く、この音楽祭と相性が良いことを感じました。そこで今年は『午後のオペラ』と題して、モーツァルトの《後宮からの誘拐》を2回、500席のくすのきホールで取り上げることにしました。森谷真理、澤江衣里の両ソプラノ、櫻田亮、谷口洋介の両テノールに加え、オスミン役にはドミニク・ヴェルナーが参加。充実したキャスティングとなったと思います。田尾下哲演出による演奏会形式の上演ですが、オペラの経験も豊富な人たちなので、即興的な演技にも期待ができそうです。モーツァルトの音楽もトルコの軍楽隊の音楽を取り入れていて華やかですし、ストーリーもスペインの青年貴族が囚われの恋人を救出するというシンプルなもの。気軽に楽しんでいただけると思います」
調布国際音楽祭の柱のひとつである「フェスティバル・オーケストラ」公演では、現在の日本を代表する演奏家が参集し、より若い世代の演奏家を指導しながら、共に音楽を創る。今年はシンガポールのヨン・シュウトウ音楽院の学生たちも参加するという。指揮は鈴木雅明だが、ブラジル出身で、ヨーロッパで活躍する女性指揮者シモーネ・メネセスも加わる。
「メネセスにはヴィラ=ロボスの『ブラジル風バッハ第7番』とオネゲルの『ラグビー』を指揮してもらいます。今年はラグビーのワールドカップが調布でも開かれるので、滅多に演奏されないオネゲルの作品を取り上げます。鈴木雅明は軸であるバッハの他に、チャイコフスキーの交響曲第5番を指揮します。楽譜の姿を浮き彫りにするような演奏になることを期待しています」
最終日のグランド・フィナーレではBCJが数々の協奏曲を演奏。
「これまでBCJではあまり取り上げてこなかったイタリア様式の協奏曲を取り上げます。ヴィヴァルディの『四季』から〈夏〉やヘンデルの『オルガン協奏曲』『合奏協奏曲 作品6-6』などです」
他にも、ワンコインで楽しめるオープニング・コンサート、歴史を感じさせる深大寺本堂での公演(完売)、ソプラノの森麻季によるリサイタル(完売)、エグゼクティブ・プロデューサーの鈴木自身が演奏とトークで参加する「まさト〜ク コンサート」が行われる。キッズ公演が充実している点もこの音楽祭の特徴。ピアノとヴァイオリンのデュオ「スギテツ」によるワークショップなど、4つの公演がある。さらに、オーディションによるオープンステージ、地元・桐朋学園大学の学生たちがプロデュースする「ミュージックカフェ」も。
「調布は新宿から特急で15分。本当の夏休みの前に、6月末の1週間をプレ夏休みとして楽しむ。そんな気軽な感じで、音楽祭を楽しみに来ていただければ嬉しいです」と鈴木は結んだ。
取材・文:片桐卓也
(ぶらあぼ2019年7月号より)
調布国際音楽祭 2019
2019.6/23(日)〜6/30(日)
調布市グリーンホール、調布市文化会館たづくり くすのきホール、深大寺 本堂 他
問:調布市グリーンホール チケットサービス042-481-7222
http://chofumusicfestival.com/cmf2019/