俊才たちが紡ぐエキゾチシズム

そして、今回の公演でもう一つのお楽しみは、トルコの鬼才ピアニスト、ファジル・サイをソリストに迎えたラヴェルの「ピアノ協奏曲ト長調」。同時期に書かれた「左手のためのピアノ協奏曲」の重厚さとは対照的に、古典的な優雅さや叙情性にあふれているのが特長だ。作曲者自身、「モーツァルトやサン=サーンスと同じ美意識で書いた」と述べているように、実に明快で見通しのよい構造で書かれている。それだけに演奏者の技量や資質が問われる難曲。スリリングな煌きを放って疾走するサイのピアノは、エッティンガー&東京フィルの情熱的かつ献身的なサポートを受けながら、鮮烈で純度の高いラヴェルを聴かせてくれるに違いない。
文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ2013年10月号から)
第839回 サントリー定期シリーズ ★10月25日(金)・サントリーホール
第840回 オーチャード定期演奏会 ★10月27日(日)・Bunkamuraオーチャードホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp
