ピエタリ・インキネン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

日本とフィンランドを繋ぐスペシャル・コンサート

 現在、多くのフィンランド出身の指揮者や作曲家が国際的に活躍しているが、1917年独立の比較的“若い国”で、人口も500万程度であることを考えると、フィンランドは驚異的なクラシック大国と言えまいか。そのライジング・スターが日本フィル首席指揮者のピエタリ・インキネン。好調の両者が6月定期でフィンランド・プロをお披露目するが、実は今年は、日本がこのヨーロッパで一番近い国と外交関係を樹立して100年というアニヴァーサリー・イヤーで、ひっぱりだこの人気指揮者と好調オケのコンビは、祝祭を寿ぐにまことにふさわしい。

 フィンランド音楽といえばシベリウスだ。民族叙事詩『カレワラ』の場面を描いた「組曲『レンミンカイネン』―4つの伝説」では、北欧の黄泉の川を描いた美しい「トゥオネラの白鳥」がとりわけ有名だが、他の曲にも若き日の才気、後年の交響曲につながるアイディアがみられる。全曲が通して演奏されるのは珍しいから、この機会に『カレワラ』のストーリーを頭に入れ、シベリウスが描く北国のドラマを楽しもうではないか。

 前半は現代もの。ヘルシンキ・フィルがシベリウス生誕125年を記念して委嘱した湯浅譲二「シベリウス讃―ミッドナイト・サン―」に続き、インキネンの先輩格として活躍する指揮者・作曲家エサ=ペッカ・サロネンの「ヴァイオリン協奏曲」。独奏の諏訪内晶子は以前、サロネン自身の指揮でオーケストラと丁々発止を繰り広げ、ジャズ風の第3楽章では白熱のあまり弦をぶち切ってしまったという逸話がある。インキネンとの共演ではどんな音楽になるのだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年5月号より)

第711回 東京定期演奏会
2019.6/7(金)19:00、6/8(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
https://www.japanphil.or.jp/