花房晴美(ピアノ)

“香り立つ”ものを出すことがピアノを弾く永遠の目的です

©武藤 章
 日本を代表するピアニストであり、華麗な演奏によって多くのファンをもつ花房晴美。パリで長く学び、エリーザベト王妃国際コンクール他、数々の国際コンクールに入賞。現在も国際的な演奏活動を活発に展開中で、2010年からは「パリ・音楽のアトリエ」と題したコンサートシリーズを開催している。今年3月には、日本デビュー40周年を迎えた17年に行ったリサイタルのライヴ録音CD『フランス・ピアノ作品集2 花房晴美ライブ・シリーズⅣ』をリリースした。

「ドビュッシー『前奏曲集』とラヴェル『夜のガスパール』は、どちらの曲も演奏する機会が多く、録音も行っています。ずっと弾き続けようと思っている大切なレパートリーですね。演奏するたびにスタート地点に立つ感覚があり、曲の見方も音の作り方も、どんどん変わっていきます。視覚的なイメージや空気感、温度や湿度など、何か“香り立つ”ようなものを出したいのです。それが私のピアノを弾く“永遠の目的”でもあります」

 パリで長く生活し、近年では特にフランスものに取り組んでいるため、花房といえばすっかりフランスもののイメージが強いが、意外にも留学中はあまりフランスの作曲家に触れる機会はなかったという。
「はじめてフランスものを弾いたのは20歳頃で、ドビュッシーの『水の反映』でした。入試はベートーヴェンでしたし、ドイツものを弾く方が実は多かったのです。学校を卒業して演奏活動をするようになってから取り組む機会が増えて、今では大切なレパートリーになっています」

 今回の録音にはアンコールとして演奏したショパンの「子守歌」も収録されているが、ショパンの演奏についても花房はある“こだわり”をもっている。
「ポーランドに生まれた作曲家ですから当然と言えば当然ですが、どうしてもショパンの演奏には“ポーランド流”が求められますよね。でも、ショパンは父親がフランス人であり、そもそも彼自身も生涯のほとんどをパリで過ごしています。ですからもっと“フランス流”の演奏でアプローチしてもいいのではないかと思って。これから色々な作品でフランスの香りを感じていただけるようなショパン演奏をしていきたいなと思っています」

 4月18日には「パリ・音楽のアトリエ」シリーズの第16集も東京文化会館小ホールで行われる。
「これまで様々な方と共演させていただき、なかなか演奏されない作品をご紹介することで、楽器の特徴や音色をたくさん勉強させて頂きました。今回は初めて尺八(ジョン・海山・ネプチューン)との共演がありますし、きっとまた新しい響きの世界を皆様にお伝えできるのではないかと思っています」
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2019年5月号より)

CD『フランス・ピアノ作品集2 花房晴美ライブ・シリーズⅣ』
日本アコースティックレコーズ
NARD-5061
¥3000+税