大野和士(指揮) 東京都交響楽団

新シーズンは抒情とロマンに満ちた20世紀作品で開幕

大野和士
©Herbie Yamaguchi

 大野和士音楽監督のもと、次々と意欲的なプログラムを披露する東京都交響楽団。4月の第877回定期演奏会Bシリーズでは、武満徹の「鳥は星形の庭に降りる」、シベリウスの交響曲第6番、ラフマニノフの交響的舞曲という3曲の20世紀作品をとりあげる。

 前半の武満とシベリウスの作品は、清冽な抒情性や透明感のあるテクスチャーが共通項といえるだろうか。「鳥は星形の庭に降りる」の題は武満が見た夢に由来する。「無数の白い鳥が星形の庭に向かって降りていく。そのなかに一羽いた黒い鳥が群れをリードしていた」というイメージがオーケストラ作品として昇華されている。一方、シベリウスが交響曲第6番について述べたのは、「他の作曲家たちは色鮮やかなカクテル作りに夢中だが、私は一杯の清らかな水を提供する」という一言。時代の趨勢に左右されず、わが道を行くシベリウスならではの表現だが、どこか武満作品とも一脈通じるようなところも。

 後半のラフマニノフの交響的舞曲は晩年の大傑作。持ち前の豊かなロマンティシズムに、アメリカ時代に身につけた輝かしく壮麗なオーケストレーションが融合して、独創的な作品が生まれた。過去の自作からの引用があったり、ラフマニノフがたびたび用いたグレゴリオ聖歌「怒りの日」の旋律が使われるなど、まさに集大成的な作品であり、事実、これがラフマニノフの最後の作品となった。大野和士と都響のコンビが、華麗なサウンドを堪能させてくれることだろう。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2019年4月号より)

第877回 定期演奏会Bシリーズ 
2019.4/26(金)19:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057 
https://www.tmso.or.jp/