佐藤彦大(ピアノ)

バッハからコンテンポラリーを経由してラフマニノフへ

©Kazashito Nakamura

 日本音楽コンクール優勝をはじめ、内外の輝かしいコンクール歴をもち、ソロやオーケストラとの共演でも活躍中の佐藤彦大が東京オペラシティの「B→C」シリーズに登場する。
「幼稚園でオルガン伴奏の讃美歌をうたったことから音楽に関心をもつようになりました。ピアノを始めたのは小学校1年の時。学校でトルコ行進曲の演奏を聴いたのがきっかけです」

 東京音大では野島稔に、その後のモスクワ留学でエリソ・ヴィルサラーゼに師事した。
「野島先生のレッスンでは、『レガート奏法の基礎になるので鍵盤をきちんと押さえなさい』といつも言われていました。ヴィルサラーゼ先生からは『テンポ通りに、レガートに』と徹底的に教わりました。ルバートを最小限にして、音楽の芯を通すことが大事という教えです。モスクワは日本のように恵まれた環境ではなく、例えば、音楽院のピアノは荒れたものが多かったのですが、みなそうした楽器を巧みにコントロールしているので驚きました。そして、音の響きをソプラノ(高音部)からつくりあげていき、音を遠くまで飛ばすことなどもモスクワで学びました」

 「B→C」のプログラムは、「鐘」をキーワードに組み立てている。
「デュティユーのソナタは、バッハのパルティータ第4番からスムーズにつながり、さらに第3楽章のコラールに鐘のイメージもあるので選びました。西村朗先生のピアノ曲は大学時代から弾いていましたが、先生の音楽にはフランス音楽のように音がたちのぼってくるイメージがありますね。『神秘の鐘』は第3曲でダンパー・ペダルを踏んで低音を響かせる部分があり、曲が“ラのシャープ”で終わるのですが、ここから最後のラフマニノフのソナタ第2番(1931年改訂版)へと自然に流れていけるように思いました。実は、モスクワに行ってから、ラフマニノフのイメージが変わったのです。かつては、ややナルシストと感じていたのですが、今は音楽へのひたむきな純粋さをより感じます」

 近年は教育活動も加わり多忙な佐藤だが、新しいレパートリーへの意欲も見せた。
「今後はシューベルト、ブラームスの後期の小品、デュティユーのピアノ曲なども弾いてみたいですね。作品をシンプルに聴かせつつ、自分らしい説得力のある演奏ができたらいいと思っています。また今回の『B→C』は同一プログラムで出身地の盛岡でもリサイタルがあります。現代音楽を聴いてもらえる機会は盛岡ではかなり少ないので、来てくださる方たちの期待に応えられれば嬉しいです」
取材・文:伊藤制子
(ぶらあぼ2019年3月号より)

東京オペラシティ B→C(ビートゥーシー)
佐藤彦大 ピアノ
2019.3/16(土)15:00 盛岡市民文化ホール(小)
問:盛岡市民文化ホール019-621-5100
2019.3/19(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 
https://www.operacity.jp/

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