節目の年にモーツァルトとイザイに向き合う
ヴァイオリニスト、米元響子がデビュー20周年を記念してリサイタルを開く。モーツァルトのソナタとイザイの無伴奏ソナタを組み合わせたユニークなプログラム。ピアノ共演は菊池洋子。
「モーツァルトが大好きで、一番最初に勉強したソナタもモーツァルトでした。以来、常に弾いています。モーツァルトを弾くと初心に戻ることができます」
菊池とは3年前にブラームスのピアノ三重奏曲第1番で初共演したという。
「とても感激しました。菊池さんはモーツァルトが非常にお得意ですので、二人でモーツァルトのソナタができればとお話ししたところ、後期の作品を弾きましょうということで、今回の選曲となりました。今は、リハーサルでお互いの音を聴きながら、どういう演奏にするかを一緒に考えているところです。K.376(ソナタ第32番)は、オープニングにふさわしい明るく華やかな雰囲気の曲です。K.454(第40番)は、しっとりとしていて、第2楽章のメロディにはモーツァルトの天才を感じます。K.526(第42番)はピアノとの駆け引きが目まぐるしいのです」
一方、イザイはベルギーを代表する作曲家。米元はかつてイザイの故郷リエージュに住んでいた。
「リエージュ音楽院の図書館にイザイの手稿譜が残っていて、それを見たとき、いろいろなイメージがわいてきました。そしてイザイを自分なりに見直したいと思ったのです。イザイは、細かいことまで全て手稿譜に書いてあり、楽譜と照らし合わせながら、作曲家自身の音色を想像するのはとても楽しいです。イザイは、技巧一辺倒ではなく、感情の吐露を楽譜に込めているのです」
今回のリサイタルでは、無伴奏ソナタ第4番、第6番などを演奏する。
「第4番は、バッハの影響を受けつつ書き上げられたイザイの美的センスが光る一曲です。第6番は、後半の最初に明るいものを持ってきたかったので選びました。今回は、ヘンレ版を使いますが、複数の自筆譜を参照し、それを演奏に反映させます」
リサイタルの準備と並行して、米元にとって初めてのアルバムとなるイザイの無伴奏ソナタ全曲の録音も行っており、近年発見されたソナタも収める。新譜は2月にキング・インターナショナルよりリリース予定だ。
現在、米元は、オランダのマーストリヒト音楽院で教授を務めている。
「私のクラスには15名の生徒がいます。生徒の音楽性に応えられるような多くの引き出しを持ちたいですね。マニュアルはなく、生徒一人ひとり違うので、心をオープンにしてアンテナを張りながら生徒に接するようにしています」
取材・文:山田治生
(ぶらあぼ2019年2月号より)
デビュー20周年記念 米元響子 ヴァイオリン・リサイタル
2019.3/2(土)14:00 浜離宮朝日ホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
https://www.japanarts.co.jp/