【会見レポート】振付家・森山開次がオペラ初演出〜全国共同制作プロジェクト《ドン・ジョヴァンニ》

 来年1月の富山公演を皮切りに、東京、熊本と全国3都市で上演される全国共同制作プロジェクト モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》(新演出・英語字幕付・日本語上演)。11月27日、総監督・指揮の井上道義、演出・振付の森山開次、ソリストらが出席し、会見が行われた。
(2018.11/27 東京芸術劇場 Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE)

会見より井上道義(総監督・指揮)、森山開次(演出・振付)、ソリストおよびダンサー陣

 全国共同制作プロジェクトは、全国の公共ホール・芸術団体などが連携して、新演出のオペラを共同制作し、国内巡演するプロジェクト。これまでに、井上道義指揮・野田秀樹演出による《フィガロの結婚》(2015年)、欧州でも数々のオペラ演出を手掛ける笈田ヨシ演出《蝶々夫人》(17年)、映像作家として国際的な評価を確立した映画監督・川瀨直美演出《トスカ》(18年)など、話題公演を実現してきた。
 本作は、《フィガロの結婚》に続くダ・ポンテ三部作の第2弾。井上道義が再び総監督・指揮を務め、演出には井上からの信頼が厚く、多彩なジャンルで精力的に活躍しているダンサー・振付家の森山開次を迎えた。

井上道義

 井上は森山の起用について、「野田秀樹と《フィガロの結婚》を行った後に何をしようかと思った時、僕の歳も考えて、若い人とやりたいと思った。この国はメジャーな仕事で若い人が思い切り冒険するチャンスが意外と少ない。森山くんは素晴らしい才能の持ち主で、これからいろんな分野で活躍できる人。ここにいる歌手もオーディションで選びましたが、僕の目に絶対間違いはありません。今回は大いに冒険します。オペラに対して、お客さんがいい意味で気楽に、誰が聴いても合点がいくようなあり方でやりたい」と意気込む。

森山開次

 一方の森山は、自身初となるオペラ演出について次にように語った。
「僕の名前を挙げることは勇気のいることだったと思います。井上さんの気持ちを受けて委縮することなく、思い切って挑戦することが僕の役割だと感じます。オペラに関して知識は浅いですが、知らない強みもあります。今日では、ダンスが入るオペラは珍しくありまん。ダンスを突き詰めていく中で、言葉のない世界にいながらも、また言葉の世界に戻りたいという思いもどこかにあり、このように言葉を扱うプロダクションに出会えることは嬉しいです。
 僕の中で『踊る』ことは『身体』と同義語になっています。物語の中で歌うということは動きが伴ってくる、それを踊りと捉えることができるのです」

左:井上道義 右:森山開次

舞台模型

 会見では、森山が構想した舞台装置の模型も公開された。
「最初にお話をいただいた時のインスピレーションとして、女性をしっかり描きたいと思いました。ドン・ジョヴァンニを取り巻く女性3名のキャラクターが三者三様で、まるでドン・ジョヴァンニ自身が女性の子宮の中で暴れまわっているような印象を持ちました。置き換え演出ではなく、バックグラウンドに女性を描く枠組があります。女性を際立たせるため、女性ダンサーのみを選びました」
 また、今回上演で注目なのは、歌詞を日本語で上演することだ(英語字幕)。井上は日本語上演について、「昔からある日本語の歌詞は古くて気持ちが悪い。日本語で上演することはものすごく大変。それでもやってみたい。これは演出のためでもある」と熱い想いを語った。

 ソリスト陣のコメントは以下のとおり。

●ヴィタリ・ユシュマノフ(ドン・ジョヴァンニ)

「ジョヴァンニがバリトンのレパートリーの中で一番好きな役です。
初めて歌った時はドイツ語、2回目は原語のイタリア語。そして3回目の今回は日本語で歌い、毎回違う言語で歌っていて不思議な感覚です。
日本語で歌うことは大きなチャレンジです」
 

 

 

●三戸大久(レポレッロ)

「私が大学に入ったのは1996年で、新国立劇場ができたのが1997年です。
新国立劇場ができるまでは原語ではなく、日本語でモーツァルトを上演していました。私たちは原語で歌う世代で、日本語でやるというのは最初は戸惑いましたが、いま興奮や期待を感じています」
 

 

 

●髙橋絵理(ドンナ・アンナ)

「このカンパニーに参加するのは初めてで、身の引き締まる思いです。
アンナは10年以上前にイタリア語で歌ったことがありますが、日本語で歌うのは初めてです。緻密に言葉を作っていただいているなと感じ、音楽稽古に励んでいます。皆さんにきちんと言葉が届くように歌いたいです」

 

 

 

●デニス・ビシュニャ(騎士長役)

「日本語のオペラを歌うのは3回目です。
オーディションの時に森山さんに『少しダンスしてください』と言われて驚きました。本番でもダンスするのかな? とても楽しみです」

 

 

 


●鷲尾麻衣(ドンナ・エルヴィーラ役)

「自分の声が割と軽いので、ツェルリーナ役志望でオーディションを受けましたが、マエストロから『エルヴィーラ役もあるんだよ』と伺い、今回はエルヴィーラを歌わせていただきます。《ドン・ジョヴァンニ》には3人の女性が出てきますが、私は一番エルヴィーラに近いと思います。ヒステリックで、自分の感情を押し殺さず、大好きな人を無我夢中で追いかけていく。女性は少なからずヒステリックな部分を持っていると思いますが、舞台上でぶちまけられるのは私にとって喜びです(笑)。
森山さんからは内なるエネルギーをひしひしと感じていて、ご一緒できることを楽しみにしています」
 

●金山京介(ドン・オッターヴィオ)

「唯一のテノールということで、テノールらしさを出せればいいなと思っています。
井上マエストロのプロダクションに加えていただき、精一杯頑張ります」
 

 

 

 

●小林沙羅(ツェルリーナ)

「クラシックバレエをやっていて踊ることが昔から大好きでした。
森山さんが演出されると聞いて、これは絶対出たいと思ってオーディションを受けました。可愛さだけではないツェルリーナを出していきたいと思います」

 

 

 

●藤井玲南(ツェルリーナ)

「大学院の時にドイツの歌劇場で研修生として所属していた時にツェルリーナ役をドイツ語で勉強しました。舞台上をバイクが走り回ったりするような激しい舞台だったので思い出深い作品でもあります。
森山さんが演出をされるので、エネルギーに満ち溢れた誰も観たことがないような舞台になるのではないかと思います」
 

 

 

●近藤圭(マゼット)

「母がバレエ教師、姉が海外でバレエダンサーとして踊っていて、僕もバレエをやれと言われてきたのですが、白タイツをはくのがどうしても嫌で習いませんでした。いまものすごく後悔しています(笑)。踊る自信はありませんが、バレエやコンテンポラリーダンスを観るのは大好きです。森山さんの演出でどんな化学反応が生まれるのか楽しみです」

 

 


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interview 森山開次(演出・振付)& 井上道義(総監督・指揮)〜音楽とダンスで描く“地獄に落ちても悔いない男”

(ぶらあぼ12月号より)

【Information】
全国共同制作プロジェクト
モーツァルト 歌劇《ドン・ジョヴァンニ》新演出(全2幕・英語字幕付・日本語上演)

総監督・指揮:井上道義 演出・振付:森山開次 
管弦楽:オーケストラ・アンサンブル金沢(1/20)、読売日本交響楽団(1/26,1/27)、九州交響楽団(2/3)
合唱:Giovanni Ensemble Toyama(1/20)、東響コーラス(1/26,1/27)、ラスカーラ・オペラ合唱団(2/3)
配役 
ドン・ジョヴァンニ:ヴィタリ・ユシュマノフ 
レポレッロ:三戸大久 
ドンナ・アンナ:髙橋絵理 
騎士長:デニス・ビシュニャ
ドンナ・エルヴィーラ:鷲尾麻衣 
ドン・オッターヴィオ:金山京介 
ツェルリーナ:小林沙羅(1/20,1/26,2/3)、藤井玲南(1/27)
マゼット:近藤 圭 
ダンサー:浅沼 圭、碓井菜央、梶田留以、庄野早冴子、中村里彩、引間文佳、水谷彩乃、南帆乃佳、山本晴美、脇坂優海香

2019.1/20(日)14:00 オーバード・ホール 
問:アスネットカウンター076-445-5511 http://www.aubade.or.jp/
2019.1/26(土)、1/27(日)各日14:00 東京芸術劇場 コンサートホール 
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 http://www.geigeki.jp/
2019.2/3(日)15:00 熊本県立劇場演劇ホール 
問:熊本県立劇場096-363-2233 http://www.kengeki.or.jp/

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