【会見レポート】東京バレエ団が20世紀巨匠振付家の傑作選をまもなく上演

 2019年に創立55周年を迎える東京バレエ団は、今秋から注目公演の上演が続く。まず11月30日から12月2日まで新国立劇場中劇場において、20世紀の巨匠振付家4名の傑作選となる〈20世紀の傑作バレエ2〉を上演。同団プリンシパルの川島麻実子、柄本弾らが一部リハーサルを公開、斎藤友佳理芸術監督とともに今の心境を語った。
(2018.11/13 東京バレエ団 会見写真Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE)

左より:柄本 弾、川島麻実子、斎藤友佳理芸術監督

 〈20世紀の傑作バレエ〉の上演は、斎藤が芸術監督就任時の3年前から、同団のレパートリーとして定着させたいと後進の大きな柱として掲げてきた。今回は4作品を上演する。
 まずドヴォルザーク「弦楽セレナーデ」にのせて創作したジョン・ノイマイヤー振付『スプリング・アンド・フォール』(同団2000年初演)は、女性ダンサー7名と男性ダンサー10名が躍動美の世界を繰り広げる叙情的な作品。ショパン「ノクターン」を中心としたピアノ曲を使用し、ミュージカル『ウェストサイド物語』でも知られる振付家ジェローム・ロビンスが手がけた『イン・ザ・ナイト』(同団17年2月初演)は、3組のカップルが織りなす恋と人間模様を描いた名作。

ジョン・ノイマイヤー振付『スプリング・アンド・フォール』より
Photo:Kiyonori Hasegawa

ジェローム・ロビンス振付『イン・ザ・ナイト』より
Photp:Kiyonori Hasegawa

 モーツァルトの二つのピアノ協奏曲(第23番、第21番)より、それぞれアダージョとアンダンテの楽章を用いたイリ・キリアン振付『小さな死』(同団17年9月初演)は、ザルツブルク音楽祭の200周年記念作品として上演され、男女の傷つきやすい関係を男女各6名と6本の剣で表現する。最後は、同団と最もゆかりの深い巨匠モーリス・ベジャールがラヴェルの名曲に振り付けた最高傑作の一つ『ボレロ』(同団1982年7月初演)と、バレエファンのみならず、クラシックファンも楽しめる演目が揃う。

イリ・キリアン振付『小さな死』より
Photo:Kiyonori Hasegawa

モーリス・ベジャール振付『ボレロ』でメロディーを踊る柄本 弾(中央)
Photo:Kiyonori Hasegawa

 今回の上演にあたり斎藤は、「芸術監督に就任して3年が過ぎ、本公演はある意味これまでの“集大成”となるもので、いままで取りあげてきた作品の一部を披露できたらという想いです。東京バレエ団には素晴らしい振付家によるたくさんの小品がレパートリーにあります。今後も大切にしていきたい作品を上演しながら、新しい振付家、例えばフォーサイス、プティ、ロビンスなどの他、これまで縁があった振付家(キリアンやバランシンなど)の新作品も取り上げたい」と語る。

斎藤友佳理芸術監督

 『スプリング・アンド・フォール』『イン・ザ・ナイト』に出演する川島は、上演の4作品を「夢の組み合わせ」と語る。
「東京バレエ団を小さい頃から観ていて印象にのこっていたのが、『ボレロ』とキリアンの作品で、いつか出てみたいと思っていました。今回出演する作品では、自分の年齢や現在置かれている立場、同時上演の作品によって、一つひとつの作品にどう向き合っていけばよいのか、いまも模索中です。それぞれの作品に自分の気持ちを込めることで作品の良さが表出されると思うので、心の切り替えの重要さも感じています」

川島麻実子

 柄本は、川島と同様『スプリング・アンド・フォール』『イン・ザ・ナイト』に出演、そして『ボレロ』の「メロディー」を一日で昼夜2回踊る。
「出演する三作品はこれまで全て踊ってきましたが、今回初挑戦となるのが一日に2回踊ることです。『ボレロ』はこれまでに3度踊らせていただき、自分らしさも出せてきたかなと思いますが、一日に2度踊るということで、マチネよりソワレ公演をよりよくできるように練習をこなしていきたい。そして、『スプリング・アンド・フォール』は男性ダンサーの振りがハードで、リハーサルでは『ボレロ』を含めて男性ダンサーをひっぱていくことができずにいました。テクニックや感情はもちろんですが体力勝負。そして、主役としての存在感、舞台上では背中で皆を引っ張っていけるようにどれだけ燃え尽きるか、無事3日間をこなせるかが課題です」

柄本 弾

 リハーサルが公開されたジョン・ノイマイヤー振付の『スプリング・アンド・フォール』は、同団では2000年に斎藤と首藤康之によって初演された作品だ。斎藤は当時の想い出を次のように語る。
「ノイマイヤーさんの世界観の一部を見たような作品です。全体的なニュアンスはノイマイヤーさんがつきっきりで教えてくださり、より彼を理解することができた貴重な時間でした。05年に『ユカリーシャ』という公演をさせていただいた際に、何を上演したいかと聞かれ『スプリング・アンド・フォール』と答えました(主演は長谷川智佳子、木村和夫)。その後、シルヴィ・ギエムさんとの全国ツアーでも首藤くんと踊り回を重ね、自分にとってより大切な作品となりました。実は今年2月にハンブルク・バレエ団が来日したときに、ノイマイヤーさんに直接指導をしていただきました。ダンサーには一分でも長く彼との時間を共有してほしいという願いでした。彼から出てくる言葉には意味があり、重みがあります」

左より:柄本 弾、川島麻実子、斎藤友佳理芸術監督

 川島にとっては、コール・ド・バレエの時に初めて大きな役を踊り、印象深い作品だという。
「踊り手の感情、香りが求められる作品です。先日、ハンブルク・バレエ団のクラスレッスンを受け、アレクサンドル・リアブコさんが第1楽章を袖でさらっと踊られているのをみました。彼に限らず、ハンブルク・バレエ団のダンサー皆さん、演じようとしているのではなく、自分が感じたまま自然に踊り、そこに気持ちが入り込んでいくのだなと実感しました。この時期にこの作品を踊れること、自分の内面や変化をより反映できる作品に向き合えることは嬉しいです」

 柄本はノイマイヤー作品は「繊細」だと語る。
「『スプリング・アンド・フォール』のリハーサルをノイマイヤーさんに見ていただいた時、第4楽章最初の女性に手を取られる振りだけでも何十回もやり直しました。ノイマイヤーさんにとってその一番最初の場面が重要で、手のもって行き方、位置が数センチ違うだけで受けとる印象が違うことを徹底的に教えていただきました。もちろんテクニックや体力的に難しい、厳しい作品ではありますが、楽章ごとに感情の波が大きく変わる作品ですので、細かい部分をしっかり演じたいと思っています」

『スプリング・アンド・フォール』リハーサルより
Photo:Shoko Matsuhashi

 東京バレエ団は〈20世紀の傑作バレエ Ⅱ〉の上演後、12月には黛敏郎の音楽に、巨匠モーリス・ベジャールが振り付けた傑作バレエ『ザ・カブキ』を上演する(19年7月にはウィーン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座での上演も決定している)。そして来年3月には、クラシック・バレエの父、マリウス・プティパの生誕200年の締めくくりとして、グランド・バレエ『海賊』を同団初演する。世界の著名なバレエ団でも上演されているアンナ・マリー=ホームズ版を採用し、舞台装置と衣裳はミラノ・スカラ座製のものを使用する。今後の東京バレエ団にも注目だが、まずは20世紀の巨匠振付家傑作選でバレエ団の深化を堪能したい。

【公演情報】
東京バレエ団〈20世紀の傑作バレエ2〉
2018.11/30(金)19:00、12/1(土)13:00 17:00、12/2(日)14:00
新国立劇場 中劇場
※配役の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
問:NBSチケットセンター03-3791-8888
http://www.nbs.or.jp/
https://www.nbs.or.jp/stages/2018/20ballet/