藝大とパリ国立高等音楽院で学び、3つの国際コンクールと日本管打楽器コンクールで優勝した気鋭サクソフォン奏者のデビュー・アルバム。バリトン・サックスでロシアのチェロ・ソナタを演奏した前代未聞(?)の内容だ。これは、“意欲的なチャレンジ”といったレベルではなく、“音楽と楽器の魅力をいとも自然に表出した”驚くべき録音といえる。とにかくフレージングが滑らかで表現力が豊か。同楽器独特の低音の妙味とアルト顔負けの高音の豊潤さ、陶酔的なまでの節回しなど、終始感嘆させられる。しかも原曲の良さを再発見させる音楽力が並でない。ぜひご一聴を!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2018年11月号より)
【information】
CD『BARITONISM ―ロシア・チェロ作品集―/本堂誠』
ラフマニノフ:チェロ・ソナタ/ショスタコーヴィチ:同/グラズノフ:2つの小品
本堂誠(バリトン・サクソフォン)
羽石道代(ピアノ)
オクタヴィア・レコード
OVCC-00143