新たな可能性への扉を開く俊英
「チェンバロをピアノと比較するのでなく、独立した楽器として見てほしい。そして、いつか主流の楽器となれれば…」と折に触れて力説する、マハン・エスファハニ。繊細かつ躍動的な快演で、“新世代の旗手”と目される俊英チェンバリストが、鍵盤作品の最高峰であるバッハ「ゴルトベルク変奏曲」を軸に、バロックから現代へ、ソロとオーケストラ共演、時空と響きを自在に超越してゆく、野心的な来日リサイタルに挑む。
イラン・テヘランに生まれ、アメリカで育った。世界各地で研鑽を積み、欧州の古楽シーンの最前線で活躍を続ける。2015年には30歳にしてイギリスの名門・ギルドホール音楽院の教授に就任。3年前にライプツィヒ・バッハ音楽祭に登場した際には、解釈・テンポ取りともに“超個性的”な「ゴルトベルク」を、翌年秋の来日公演では、バッハとF.クープランにイギリスの小品と、バロックを縦横に往き来するプログラムを披露するなど、各地で絶賛と興奮の渦を巻き起こしている。
今回は、ステージで彼が披露するたび、大きな反響を呼んできた「ゴルトベルク」を、遂に日本で開陳。これに先立ち、スティーヴ・ライヒの「ピアノ・フェイズ」を奏者自身の編曲で、マイケル・ナイマンの「チェンバロ協奏曲」を川瀬賢太郎指揮の日本センチュリー交響楽団との共演で弾く。特に前者は、ライヒが「細部まで行き届いた解釈が、音楽を輝かせている」と絶賛した逸品だ。チェンバロを武器に、新たな可能性への扉を開く俊英。その瞬間を、自分の耳で体感してみたい。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2018年11月号より)
2018.12/10(月)19:00 すみだトリフォニーホール
問:トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212
http://www.triphony.com/