徳島県出身のギタリスト徳永真一郎が10年半に及ぶフランス留学を終えて、日本での活動を積極的に展開し始めた。7月25日には、福田進一が気鋭の若手ギタリストを発掘・紹介するディスカバリー・シリーズ第3弾として、初録音となるアルバム『テリュール』(マイスター・ミュージック)をリリースする。「収録作品は僕の関心のある20世紀のギター音楽、特にタレガ以降のスペインのギター音楽を中心に構成しました」と徳永。まずレヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサ(1896〜1981)のギター曲、そして彼の弟エドゥアルドが兄のために書いた曲、そしてデ・ラ・マーサに献呈されたアントニオ・ホセ(1902〜36)の「ソナタ」などが並ぶ。
「デ・ラ・マーサの作品は『サパテアード』などのタイトルからも分かるように、フラメンコの影響を受けたものが多く、とても軽快なもの。日本人の耳にも親しみやすいものだと思います。そしてホセのソナタは今回どうしても収録したかった曲で、長く取り組んできた作品でもあります。ホセは若くして亡くなったため、忘れられていた時期もありましたが、モーリス・ラヴェルがその才能を高く評価するほどの作曲家でした。このソナタを聴くだけでも、その才能の片鱗が分かると思います」
その他、フランソワ・クープランの「神秘的なバリケード」、ディアンスの「サウダージ第2番」、パリ音楽院の修士試験でも弾いたというミュライユ「テリュール」なども録音された。
「長くフランスに留学していたので、やはりフランスの作品も収録しておきたいと思いました。特に『テリュール』は演奏の難しい現代曲ですが、ここにもフラメンコ的なラスゲアード奏法が含まれています。これはおそらく日本では初録音となります」
フランス留学を思い立ったのは、師事したいギタリストが居たからだそうで、ストラスブールやパリでアレクシス・ムズラキス(デュオ・メリス)、ローラン・ディアンス、ジュディカエル・ペロワに師事。その他、今村泰典のもとでリュートも学んだ。留学時代の大きな成果のひとつは現代の作曲家たちと知り合えたこと。
「同時代の作曲家による作品の初演も多く手がけました。その中で松宮圭太さんの『ギターとアンサンブルのための小協奏曲』のマドリードでの世界初演にも参加できました。同時代の作曲家たちともっと交流を深めていきたいですね」
非常に繊細で、かつ透き通った音色、素晴らしい技巧の持ち主である徳永。彼の生の音は、8月末から行われる「第13回 Hakuju ギター・フェスタ2018」の中の「旬のギタリストを聴く」公演(9/1)で聴くことができる。
取材・文:片桐卓也
(ぶらあぼ2018年8月号より)
第13回 Hakuju ギター・フェスタ2018 イタリア2 〜Musica Italiana!
旬のギタリストを聴く 徳永真一郎 リサイタル
2018.9/1(土)16:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700
http://www.hakujuhall.jp/
CD
福田進一ディスカバリー・シリーズ 第3弾『テリュール』
マイスター・ミュージック
MM-4038 ¥3000+税
7/25(水)発売