飯森範親(指揮) 東京交響楽団

反ナチ・オペラ《白いバラ》、ついに本邦初演!


 第二次世界大戦が激しさを増すさなか、ヒトラーのお膝元、ドイツ・ミュンヘンで反ナチ活動を行った学生たちがいた。ゲシュタポに捕らえられた彼らは騒乱の罪で即座に処刑されるが、その活動は戦後、「白いバラ」抵抗運動として広く知られていく。
 ことの顛末は書籍や映画など様々に語られているが、作曲家、プロデューサー、劇場支配人として辣腕を振るってきたウド・ツィンマーマン(オペラ《兵士たち》で知られるB.A.ツィンマーマンとは別人)はこれを2度にわたりオペラに仕立ている。これが《白いバラ》だ。
 今回日本初演されるのは2人の歌手と15人のアンサンブルのために書かれた1985年版。運動の首謀者として真っ先に捕まったショル兄妹の刑執行に至るまでの心の動きを強い緊張感で克明に描き、世界中で再演されている。
 また、シュトゥットガルト州立歌劇場の専属歌手・角田祐子がゾフィー役を歌うのも見どころ。ドイツのオペラ界を席巻する角田は日本ではまだまだ知られていないが、その実力を体感する絶好のチャンスが到来した。ゾフィーの兄ハンスを歌うクリスティアン・ミードルはすでに役を手中にしており、ドイツでの活動経験豊富な飯森範親のタクトの下、密度の濃い共演が期待できる。
 前半に演奏されるヘンツェの「交響的侵略〜マラトンの墓の上で〜」(2001)は1950年代に書かれたバレエ音楽「マラトン」を下敷きに、絢爛たる音の絵巻物を万華鏡のように繰り広げる、一種の巨大管弦楽のコンチェルト。15分の持続をひたすら爆走する、アドレナリン大放出のパワフルかつゴージャスな音楽だ。
文:江藤光紀
(2018年5月号より)

第660回 定期演奏会 
2018.5/26(土)18:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONYチケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp/