横須賀へコンクールを聴きに来ませんか
4月29日から1週間にわたり、よこすか芸術劇場を会場として第7回「野島 稔・よこすかピアノコンクール」が開催される。2006年から2年周期で継続されてきたこのコンクールは、多くの逸材を世に送ってきた。今回の審査は、野島稔(審査委員長)、東誠三、上野真、梅津時比古、野平一郎という顔ぶれで行われる。現役ピアニスト中心の構成だ。
開催を間近にして、野島稔に話をきいた。
「課題曲の出し方としては、第2次予選でベートーヴェンのソナタのうち、指定の15曲から任意のものを全楽章弾く、というところが最大の特色でしょう。時間的な制約から緩徐楽章をカットすることも他ではよくありますが、ベートーヴェン自身が『フィナーレではモーツァルトに敵わない、自分が勝負するのは緩徐楽章』だと言っているので、全楽章を弾く意味はとても大きいのです。選択範囲の15曲は初期、中期、後期すべてにわたっていますが、どれも難しい。決して初期がやさしいということはありません。むしろ、初期にはベートーヴェンの才気と書法との間に隔たりがあって、その隔たりを演奏者が埋めなければならない分、難しいですね。中期から後期は書法が円熟していきますから、弾きやすいともいえます。1曲1曲、すべて世界が異なるので、それぞれのコンテスタントが今、どういう勉強をしているか、それでどれを選ぶかということが問われるわけです」
選択範囲には、後期の4曲も含まれているが、どれを選ぶコンテスタントが多かったのだろうか。
「後期が多いですね。中期では『熱情』『ワルトシュタイン』かな。いずれにせよ、全楽章弾いてもらうので、その奏者のすべてをみることができます。彼らがどんなアーティストに育つ可能性があるか、というところをみます」
たしかに、人前でベートーヴェンのソナタを1曲丸ごと弾くことは、すべてが曝け出される恐ろしい体験だ。それも1806席の大きな会場で弾く。コンクールは予選から全日程無料公開されているので、1日中聴き入る熱心なピアノ・ファンも多い。
「最初の頃は、本選以外は小さな会場での実施でしたが、今は全審査、すべて大きな会場です。やはり、よこすか芸術劇場は空間が広くて響きが豊かですから、それを体験するだけでも意義があります」
本選は35〜40分の任意のプログラムだ。
「みなさん、自分の得意なものを弾くわけですけれど、現代曲や日本人作品を弾く人はほとんどいませんね。大曲を核に何曲か組み合わせる、そのプログラミングも評価します。功成り名遂げた演奏家を聴くのもよいでしょうが、これからの人が、一発勝負で弾くドラマといいますか、それはとても迫力がありますよ。ぜひ、聴きにいらしてください」
取材・文:萩谷由喜子
(ぶらあぼ2018年4月号より)
第7回 野島 稔・よこすかピアノコンクール
第1次予選 2018.4/29(日・祝)〜5/1(火)
第2次予選 2018.5/2(水)、5/3(木・祝)
本選・表彰式 2018.5/5(土・祝)
会場:よこすか芸術劇場
問:横須賀芸術文化財団(よこすかピアノコンクール事務局)046-828-1603
http://www.yokosuka-arts.or.jp/