ロシアのピアノ音楽のエッセンスを体感
ロシア育ちの21歳、松田華音の美麗なサウンドがこの秋、日本のコンサート・ホールを駆けめぐる。
全国で5公演が予定されているリサイタル(東京公演は10/30)は、先ごろリリースされたセカンド・アルバムにも収められたプロコフィエフ「『ロメオとジュリエット』より10の小品」とムソルグスキー「展覧会の絵」を軸としたプログラムだ。
「展覧会の絵」は、昨夏にも日本で演奏した。
「ロシアと言えば、ピアノ音楽ではラフマニノフやスクリャービンを連想する方が多いと思いますが、それとはまた違う、古いイメージ…ムソルグスキーの生きた時代やそれよりも前のロシアの風景に魅力を感じます」
この作品のポイントは「プロムナード」だという。
「形を変えて何度も登場するプロムナードは、とても難しいのです。プロムナードをつかむことができれば、曲は仕上がると言っても良いでしょう。ほかの小品は、キャラクターがはっきりとしています。でも、プロムナードをどう弾いたら良いかとずいぶん考えました」
そして、「展覧会の絵」と同じような組曲ふうにまとめられた「ロメオとジュリエット」を選んだ。
「この曲すべてが魅力的。バレエも映像などでよく観ています。物語の舞台はロシアではありませんが、プロコフィエフの音楽を聴いていると、彼の時代のロシア…ソ連を垣間見ることができると思います」
オーケストラとの共演も3公演予定されている。12月には地元・高松でゲルギエフ&マリインスキー歌劇場管とラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」を演奏する(12/4)。このコンビとは、今夏と昨夏にウラジオストクの極東音楽祭で共演。ゲルギエフを「素晴らしい音楽家」と尊敬し、マリインスキーのオーケストラについては「コンチェルトでもオペラを弾いているのではと感じられます。音が鮮やかなのです」と語る。
6歳で日本を離れ、モスクワ在住15年。母との会話以外は、本を読むときも考えるときも、すべてロシア語。「ロシア語で考える方が簡単」なのだとか。そして、ロシア語と結びついたピアノのレッスンついて、松田はこう語る。
「私の先生は、音楽を創っていくとき、言葉をつけたりストーリーを考えてくださったりしました。フレーズにあった言葉をつけて、意味がなくてもフレーズにあった言葉を考える…そういう教え方は、ロシアでは多いです。ここでこの言葉をつけたら、うまく音と音の間が埋まり、ひとつのフレーズが完成し、フレーズに意味ができるという様に」
最後に、読者のみなさまへのメッセージをいただいた。
「コンサートで弾いている時は、お客さまのエネルギーが伝わってくるので、その雰囲気を味わいながら弾いています。コンサートならではの魅力を感じてもらえるよう、心を込めて演奏します」
取材・文:道下京子
(ぶらあぼ2017年10月号から)
第2弾アルバム リリース記念
松田華音ピアノ・リサイタル
2017.10/30(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
※その他公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.japanarts.co.jp/
CD
『ムソルグスキー:展覧会の絵/松田華音』
ユニバーサルミュージック
UCCG-1768
¥3000+税