「過去の作品を楽しむなら、それぞれの作品がいつも新鮮に響くように私達は出来る限りの努力をするべきである」。世界的なバロック・チェロの名手で、卓越した指揮者としても活躍、そして楽壇随一の名文家として知られる鈴木秀美。最新エッセイ集『通奏低音弾きの言葉では、』(アルテスパブリッシング刊)の中で、こう述べている。そんな名手が、「チェリストの聖典」こと、バッハの「無伴奏チェロ組曲」全6曲に再び対峙する。
18世紀オーケストラや、兄で鍵盤楽器奏者の雅明が主宰するバッハ・コレギウム・ジャパンなど、主要な古楽団体に参加する一方、自身もオーケストラ・リベラ・クラシカを設立し、指揮者として活躍。そして、ソリストとしても精力的に活動する中、常に軸に据えて来たのが、バッハの「無伴奏チェロ組曲」全6曲であった。2009年には、全6曲の楽譜の校訂を自ら手掛け、詳細な解説を付して出版(『無伴奏チェロ組曲』東京書籍刊)。幾度もステージで取り上げ、レクチャー(公演にあわせて10/7に開催)も重ねているが、決してルーティンに陥らず、瑞々しい響きを紡ぎ続けている。
浜離宮朝日ホールで12年ぶりとなる鈴木の「無伴奏組曲」全曲演奏は、第1回(第1、3、5番)と第2回(第2、4、6番)、2つのステージに分けて。鈴木は言う。この作品を演奏する際には「この組曲が言葉として語られ、見え隠れする声部の織り成す綾が楽しめるようにするためには、時に“反チェロ的”な奏法が必要だ」。こうして、彼のチェロが饒舌に語り出す瞬間を、ぜひ体感してみたい。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2017年10月号より)
第1回 2017.11/3(金・祝)14:00
第2回 2017.11/10(金)19:00
浜離宮朝日ホール
問:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990
http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/
特別講座 J.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲」の魅力
2017.10/7(土)13:00 朝日カルチャーセンター新宿教室
問:朝日カルチャーセンター新宿教室03-3344-1945
http://www.asahiculture.jp/shinjuku/