1988年に始まった「北九州国際音楽祭」が、今年遂に30回目を迎える。同音楽祭は、国内外の一流アーティストの招聘、オリジナル企画、若年者層向けの事業など、高品質かつバラエティ豊かな内容が魅力。記念イヤーの今回は、いつにも増して食指をそそられる。
海外からの目玉は、「ペトル・アルトリヒテル(指揮)チェコ・フィルハーモニー管弦楽団」(10/7)。音楽大国が誇るこの東欧随一の名門オーケストラは、柔らかく芳醇なサウンドで、絶大な人気を集めている。特に近年は、首席指揮者ビエロフラーヴェクが精緻なアンサンブルを構築し、新たな黄金時代を迎えていたが、彼は今年5月に急逝。今回は、逝去直前のマエストロからプラハの春音楽祭の指揮を託され、プログラムを変えずに成功を収めたアルトリヒテル(彼もプラハ響等のシェフを歴任したチェコきっての名匠)が、その遺産ともいうべき名演を披露する。演目は、ドヴォルザークの序曲「謝肉祭」、チェロ協奏曲、交響曲「新世界より」が並んだ超極め付け。独奏も、しなやかな音楽性で人気のチェリスト、ジャン=ギアン・ケラスだから、すべてに極上のひとときが約束されている。
オリジナル企画の注目は、第30回記念「ガラ・コンサート」(11/26)。2015年ハノーファー国際コンクールで第2位を受賞した北九州出身の俊英・南紫音(ヴァイオリン)、08年国際ピアソラ・コンクールで日本人初・史上最年少で準優勝を果たした三浦一馬(バンドネオン)、長く第一線で活躍する清水和音(ピアノ)と、北九州市出身のN響コンサートマスター・篠崎史紀が率いる当音楽祭の名物「マイスター・アールト(プロ楽団の奏者)×ライジングスター(優秀な若手演奏家)オーケストラ」が繰り広げる、まさに“ここでしか聴けない”コンサートだ。楽器の異なる協奏曲を3曲味わえるのも稀な機会だし、人気奏者が揃った3時間にわたる公演は、濃密かつ贅沢というほかない。
このほか、長哲也(都響首席ファゴット奏者、北九州出身)、金子亜未(新日本フィル首席オーボエ奏者)、永原緑(ピアノ)の“気鋭”組(10/30)、徳永二男(ヴァイオリン)、堤剛(チェロ)、練木繁夫(ピアノ)の“重鎮”組(11/5)で、室内楽の味を比べるのも妙味十分。思索的な個性派ピョートル・アンデルシェフスキ(10/9)、美術館内で絵画とセットで楽しめる田部京子(11/6)の両ピアノ公演もお薦めだし、古楽の名曲を満喫させる「鈴木優人(チェンバロ)with バッハ・コレギウム・ジャパン」(11/11)、昨年26年ぶりの日本公演で大反響を呼んだ英国式ブラス「ブラック・ダイク・バンド」(10/29)、雅楽の「東京楽所」(10/14)といった毛色の異なる団体や、教育・特別プログラムなど話題は尽きない。この秋は北九州にご注目あれ!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2017年9月号より)
2017.10/7(土)〜11/26(日)
アルモニーサンク北九州ソレイユホール、北九州市立響ホール、西日本工業倶楽部、北九州市立美術館 他
問:北九州国際音楽祭実行委員会事務局093-663-6567
http://www.kimfes.com/