開場20周年を迎える新国立劇場が、「舞踏の今」と題し、世界で高い評価を得る2つのダンスカンパニーを紹介する。第1弾は、11月25日、26日に中劇場で上演される山海塾『海の賑わい 陸(オカ)の静寂ーめぐり』。本作の演出・振付・デザインを手がける山海塾主宰の天児牛大(あまがつうしお)と新国立劇場舞踊芸術監督の大原永子が登壇し、会見を行った。
(2017.9/22 新国立劇場 Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE)
大原芸術監督は上演にあたり、「海外で活動していた時にツアー先で、『山海塾を知ってる? すごいエキサイトするんだよ』と山海塾の名を何度も耳にしてきた。海外の方にそれだけ関心を持たれていることは、日本人としてとても誇らしく、今回公演できることは期待とともに感謝している」と語る。
山海塾は天児牛大が1975年に創設。80年より海外公演を開始し、82年からは世界のコンテンポラリーダンスの最高峰であるパリ市立劇場を創作活動の本拠地とし、同劇場との共同プロデュースにより、およそ2年に1度のペースで新作を発表してきた。
天児は「最初は男ばかり、白塗りの日本人のカンパニーということで物珍しさもあったと思うが、ここまで持続できたことは舞踊の一ジャンルとしてこういうアプローチがあるんだ、とある程度認められたと感じている」と、これまでの活動を振り返る。
『海の賑わい 陸(オカ)の静寂―めぐり』は、山海塾とパリ市立劇場、シンガポールのエスプラネイド・シアターズ・オン・ザ・ベイ、北九州芸術劇場とで共同制作され、2015年3月に北九州芸術劇場で世界初演された。山海塾の舞踏作品が国内で世界初演されたのは、実に36年ぶりのことだった。
作品は、「遠くからの呼び声」から「回帰」に至るまでの全7景。2億5千万年前に日本の海中で繁栄していた生物『ウミユリ』をモティーフとする。
演出・構成・振付を担当し、自身も出演する天児は同作について、「サブタイトル(『海の賑わい 陸(オカ)の静寂』)が作品の内容をある意味指し示しています。常に問いかけたいと考えていて、“変容すること”、“不動ではないこと”、揺れ動いていてフラジャイルなものが創作のベースになっています。今回は単に自然史的なものを説明するだけじゃなく、そこに人、感情、希望、絶望・・・を、“賑わい”と“静寂”を対比させながら成立させた」と語る。
音楽は加古隆、YAS-KAZ、吉川洋一郎の3名。どの場面でどの音楽を使うかは天児が決定しているという。
「彼らとコラボレーションするのではなく、3人がすでに創り上げている音楽をどの場面で使用するかを考えます。公演ごとに創ってもらっているわけではありません。ただ、加古さんとの関わりは、パーカッションのYAS-KAZさん、シンセサイザーの吉川洋一郎さんの二人とは違います。彼の既成の音楽を作品中の“テキスト”として使いたい。ですから、加古さんとは作品ごとに話し合います。例えば舞台用に章節数を増やしたり、リズムをどうするか、舞台用のオリジナルバージョンとして成立するよう手を加えてもらっています」
来年3月には北九州芸術劇場で『新作』の世界初演が予定されている山海塾。新作を創作する過程について質問が及ぶと、次のように語った。
「新作を創るうえでは迷うことが大事です。最初からタイトルやテーマはありません。こういう方向性で、舞台美術はこう、という考えをメンバーにレクチャーしていきます。試みから始まり、最終的にある切り口が出される。稽古は音がない、鏡がない中で行い、そこで集中する。原則、無音でやりますから、端から見ると何をやっているか分からないと思います。何かを発散できる場所ではない。ちょっと異常な空間ですね(笑)」
新国立劇場 開場20周年記念
舞踏の今 その1
山海塾「海の賑わい 陸(オカ)の静寂―めぐり」
2017.11/25(土)、11/26(日)各日14:00 新国立劇場(中)
演出・振付・デザイン:天児牛大
音楽:加古隆、YAS-KAZ、吉川洋一郎
出演:山海塾
天児牛大
蟬丸、岩下 徹、竹内 晶
市原昭仁、松岡 大、石井則仁、百木俊介
問:新国立劇場ボックスオフィス03ー5352ー9999
http://www.nntt.jac.go.jp/dance/
★公演終了後、ポストパフォーマンス・トーク実施
日時:2017年11月26日(日)14:00開演 公演終演後
会場:新国立劇場 中劇場
出演:天児牛大(山海塾主宰)、石井達朗(舞踊評論家、愛知県立芸術大学客員教授、慶應義塾大学名誉教授)
料金:無料
入場方法:『海の賑わい 陸(オカ)の静寂―めぐり』の両日いずれかの本公演チケットをご提示ください。
問:新国立劇場 営業部 03-5351-3011