【会見レポート】イングリッシュ・ナショナル・バレエ日本公演まもなく開幕!

 2012年にタマラ・ロホが芸術監督に就任して以来、躍進中のイングリッシュ・ナショナル・バレエ(以下、ENB)が16年ぶりに来日し、『コッペリア』と『海賊』を上演する。7月8日の公演開幕を前に、6日、東京文化会館で記者会見を行った。
(2017.7/6 東京文化会館 取材・文:渡辺真弓 Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE)

左より:ローレッタ・サマースケールズ、ユルギータ・ドロニナ、イサック・エルナンデス、タマラ・ロホ、高橋絵里奈、セザール・コラレス

 バレエ団の来日は、1969年(旧称ロンドン・フェスティバル・バレエ)、2001年に次いで3回目。会見には、ロホをはじめ、リード・プリンシパルの高橋絵里奈とイサック・エルナンデス、プリンシパルのローレッタ・サマースケールズ、ファースト・ソリストのセザール・コラレス、ゲスト・アーティストのユルギータ・ドロニナ(ナショナル・バレエ・オブ・カナダ)の6名が出席。世界各国から集まった精鋭たちが、和気あいあいのムードの中、新生ENBの魅力を積極的にアピールした。

ダンサーを紹介するタマラ・ロホ(左)

 まずロホ監督が、「私の下でバレエ団は大きく変化した。質の高い舞台をお楽しみください」と誇らしげに述べれば、メンバーたちもバレエ団の特色を次のように語った。
「今のENBはタマラ自身。彼女が自分のキャリアを通してできなかったことをここで実現させている。ダンサーを解放してくれる彼女に私たちもついていきたい」(サマースケールズ)
「ここは特別な場所で、ロンドンという街の多様性を表しているようだ。皆学校もビジョンも違うが、常に前進あるのみで新しい芸術を目指している」(エルナンデス)

『海賊』メドーラとギュルナーラを踊るローレッタ・サマースケールズ

『コッペリア』フランツと『海賊』コンラッドを踊るイサック・エルナンデス

 今回上演されるのは、『コッペリア』全3幕と、『海賊』プロローグ付き全3幕の2本。前者は、プティパ版をもとに英国バレエの重鎮ロナルド・ハインドの改訂版。とりわけ後者は、ロホが芸術監督就任直後の13年に初演されたアンナ=マリー・ホームズ版で、既にDVDとなり好評を博したほか、昨年パリ・オペラ座ガルニエ宮で上演され大成功、待望の日本上陸となる。ダンサーとしても現役のロホは、「私が踊ることによってバレエ団に注目してほしい。踊れるうちは自分で示して教えていきたい」と語り、両演目に主演する。

タマラ・ロホ

 『コッペリア』でスワニルダを踊る高橋は、「1996年に入団して、ENBは家族のよう。生まれた日本で踊ることを待ち望んでいた。夢が叶って皆と一緒に踊れるのは本当に嬉しい」と抱負を語る。初日、アリーナ・コジョカルの代役としてコラレスと共演することになったドロニナは同作を「軽やかで楽しい舞台なので、子供にも楽しんでもらえるのが魅力」と述べた。

『コッペリア』スワニルダを踊る高橋絵里奈

『コッペリア」スワニルダを踊るユルギータ・ドロニナ

 一方『海賊』については、「セットも演出も素晴らしいので、エンターテインメントとしての醍醐味を味わってほしい」(サマースケールズ)、「誰が主役かと思うほど、リード・ロールが多い」(エルナンデス)、「花火のようなバレエ。自分でチケットを買って客席で観たいくらい」(コラレス)と主役陣から熱い思いが語られるなど、今から開幕が待ち遠しい。

『コッペリア』フランツと『海賊』アリを踊るセザール・コラレス

 ロホ監督のバレエ団運営のビジョンはすこぶる明晰である。
「他の芸術からのインスピレーションを大切にし、バレエを成長させていきたい。感性も大事だがテクニックも大事。ロンドンに暮らして20年。演劇と同様、バレエも今の観客が楽しめるようにしたい。私は、スペインというバレエの伝統の浅い国の出身だが、逆に自由がある。様々な国のバレエを客観的に見て、よいところを吸収する機会に恵まれた。例えば、マッツ・エックの『カルメン』を踊って、自分に正直になることを教えられた。私の学んだ教訓を若いダンサーたちに伝授していきたい」 
 2018年12月には、バレエ学校と一緒の新しい建物が完成するという。今回の日本公演は、ENBの今後の発展を占う上で見逃せない公演となりそうだ。

タマラ・ロホ

【公演情報】
イングリッシュ・ナショナル・バレエ 2017年日本公演

『コッペリア』
7/8(土)13:00 18:00、7/9(日)14:00 東京文化会館
7/20(木)18:45 愛知県芸術劇場

『海賊』
7月14日(金)18:30、7/15(土)14:00、7/16(日)14:00、7/17(月・祝)14:00 東京文化会館

※公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。 
問:NBSチケットセンター03-3791-8888(東京公演のみ)
  http://www.nbs.or.jp/
  CBCテレビ事業部052-241-8118(7/20公演のみ) 
  http://www.hicbc.com/event/nimf/40th/20170720/