ヴィルトゥオーゾでサプライズ!
上岡敏之の新日本フィル音楽監督就任1年目のシーズンが終わろうとしている。1年通して実感するのは、彼の既成概念に囚われないプログラミングやアプローチによって、オーケストラのテイストも徐々に変化してきたこと。それは今後のさらなる進化を期待させてやまない。さて、シーズンを締めくくる7月の定期演奏会〈ルビー〉では、「リクエスト・コンサート」が実施される。これは昨年9月〜今年2月の定期演奏会でリクエスト応募用紙を配布し、会場、ウェブ、ファックスで投票された楽曲の中から、上岡自身がプログラムを決定し指揮するという企画。定期演奏会では前代未聞ともいえるユニークな試みだ。
選ばれたのは、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番とベルリオーズの「幻想交響曲」。リクエスト上位曲の中から、直近の演目等を勘案した上で「幻想」を選び、それに即してパガニーニを組み合わせたとの由。上岡は「今回テーマを『ヴィルトゥオーゾ』と決めて、この2曲を選んだ」旨を述べている。確かに、ヴァイオリンの難技巧満載の協奏曲と、オケのヴィルトゥオージティが存分に発揮される交響曲。しかも両作曲家は交流があっただけに、1つのプログラムとしても意味深い。
独奏は戸田弥生。エリーザベト王妃国際音楽コンクールの優勝以来活躍を続ける名手であり、正確な技巧と情熱的な表現はパガニーニにも相応しい。そして「幻想」は、聴きなれた曲も一から洗い直して耳を奪う(本人は「楽譜通り」と話す)上岡が、いかなる表現を聴かせるのか? どうみても興味津々。シーズン最後にサプライズの予感が漂う。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2017年7月号から)
第8回ルビー〈アフタヌーン コンサート・シリーズ〉リクエスト・コンサート
7/21(金)、7/22(土)各日14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
http://www.njp.or.jp/