藤岡幸夫(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

大英帝国とソビエト連邦の濃密で気高い響き

 エルガーは、「パーセル以来200年ぶりに出現したイギリスの大作曲家」と形容される。東京シティ・フィルの7月定期は、まさにその2人を並べたプログラム。しかもメインとなるエルガーの交響曲第1番は、ちょうど100年前の1907〜08年に書かれた作品ゆえに、合わせて300年の時の流れを実感させる。さらに、前半のパーセルの「シャコンヌ」はブリテンの編曲で、間にはショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番が披露される。つまり20世紀のサウンドの多彩さをも体感させる、示唆に富んだ内容だ。
 指揮は、英国王立ノーザン音楽大学を卒業後、BBCフィルなどのイギリスのオーケストラや、長く首席指揮者を務める関西フィルでの活躍が光る藤岡幸夫。シティ・フィルでは、2015年11月にヴォーン・ウィリアムズの「田園交響曲」で賞賛を受けており、彼が深く愛するイギリス音楽での定期再登場に大きな注目が集まる。ちなみにパーセルの「シャコンヌ」は、哀愁を湛えた感動作で、エルガーの1番は、悠然たる響きと力強くも高貴な音楽が流れゆく、後期ロマン派風(「威風堂々」風でもある)の大作。今回はこのイギリスの本丸に挑む藤岡の意気込みに、高関健シェフ就任後の演奏密度の向上顕著なシティ・フィルが呼応し、充実の時間をもたらしてくれるに違いない。
 独奏は、若くして内外で活躍し、16年には上海アイザック・スターン国際ヴァイオリン・コンクールで優勝した木嶋真優。緊迫感や高度な技巧を要する難曲ショスタコーヴィチの1番は、コンクールで演奏して手の内に入れているだけに、ハイレベルの名奏が期待される。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2017年7月号から)

第308回 定期演奏会
7/22(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
http://www.cityphil.jp/