尾高忠明(指揮) 読売日本交響楽団

ハープ版「アランフェス」など人気作を集めて

 尾高忠明は90年代に読響の常任指揮者を務めた後も、名誉客演指揮者として継続的に登壇し続け、両者の関係は実に息の長いものとなってきた。東京のオーケストラ・シーンはいまや目まぐるしく変わっているが、地道に作られてきた信頼関係はそれだけに貴重である。
 5月の名曲シリーズ3公演のメインはブラームスの交響曲第1番。荘重な気分で始まった音楽は優美な緩徐楽章、クラリネットののどかな歌へと続き、終楽章ではアルプスの雄大な山々を想起させる角笛に導かれ歓喜へと至る。もちろん指揮者もオケも聴かせどころやツボを知り尽くしているから、暗から明へという基本設計のカタルシス、交響楽の醍醐味をしっかりと味わわせてくれるだろう。“老舗レストランの名シェフが腕を振るう看板メニュー”だから、安心して舌鼓を打ってほしい。
 協奏曲にはハープ界の貴公子、グザヴィエ・ドゥ・メストレが登場し、「アランフェス協奏曲」を聴かせる。哀愁の漂う第2楽章の旋律は有名で、テレビや映画などでもよく耳にする。もともとはギター協奏曲だが、今回はメストレの輝かしいハープの音色がラテンのリズムと情熱をどんな風に演出するのかに注目したい。
 尾高は多くの日本人作曲家の現代曲を取り上げ、創作界を支えてきた指揮者でもある(父は指揮者の尾高尚忠、兄・惇忠は作曲家)。冒頭に演奏される芥川也寸志「弦楽のための三楽章『トリプティーク』」は、土俗性とモダンなセンスが融合した第1楽章にひなびた子守歌が続き、変拍子が特徴的なフィナーレで結ぶ人気曲だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ 2017年5月号から)

第602回名曲シリーズ 5/26(金)19:00 東京芸術劇場
第96回みなとみらいホリデー名曲シリーズ
5/27(土) 14:00 横浜みなとみらいホール
第5回パルテノン名曲シリーズ 5/28(日)15:00 パルテノン多摩
問:読響チケットセンター0570-00-4390
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