ヨンフン・リー(テノール)〜マリインスキー・オペラ来日公演

 5年ぶり2度目の来日。2011年のメトロポリタン・オペラ《ドン・カルロ》で、急遽ヨナス・カウフマンの代役としてタイトル・ロールを歌い、ドラマティックな歌唱と演技で日本の観客を釘付けにした。マリインスキー・オペラ日本公演2016では、同じく《ドン・カルロ》の主役を歌う。
取材・文:小田島久恵(音楽ライター)

主役級のキャンセルが相次いだ震災直後の2011年MET日本公演 急遽代役出演で見事なドン・カルロ役を披露したヨンフン・リー C)三浦興一

主役級のキャンセルが相次いだ震災直後の2011年MET日本公演
急遽代役出演で見事なドン・カルロ役を披露したヨンフン・リー
C)三浦興一

ーーこの5年間ですっかり大スターです
METでデビューしたときは、『彗星のごとく・・・』などと言われたものですが、実は地道な努力の結果なんですよ。それまでもヨーロッパ各地の劇場でこの役を歌っていましたし、毎回真剣に取り組んでいました。僕のキャリアの中で画期的だったのは、2007年にフランクフルト歌劇場で上演された新制作の《ドン・カルロ》です。オープニングの2週間前に主役のテノール歌手が降板になり、急遽僕がキャスティングされたのですが、新制作ということもあり大きく注目されていたプロダクションでした。その公演を成功させ、翌年にはロリン・マゼールの招待でバレンシアの劇場でも歌うことが出来ました。それが大きな転換点だったと思います。

ーーMETでは色々な役を歌われていますが、アンナ・ネトレプコと共演した《イル・トロヴァトーレ》は日本でもライブビューイングで観ることができました
アンナはすごくいい人! そしてとても普通の人なんです。いわゆるオペラ・スター的な気取ったところが全くないのですね。アンナとホヴォロストフスキーとは、2018年にも《トロヴァトーレ》をやるんです。息の合った3人なので「毎年やりたいね」と話しているんですよ。

ーー楽しみです! マリインスキーとの共演は昨年のバーデン・バーデンでの《ドン・カルロ》だったとお聞きしました。この劇場と再び日本で歌う気持ちは?
ゲルギエフ氏に認めていただいている嬉しさがあります。バーデン・バーデンで歌ったとき、公演後にマエストロが楽屋を訪ねてきてくださって「君のレパートリーを書き出してくれ。今までやってすべての役で契約したい」と仰ってくださったんです。日本でも最高の演技をしたいと思っています。


ーーさきほど、マリインスキーのスタッフと《ドン・カルロ》の中で使う映像を撮られていましたが、何度も同じことを繰り返す忍耐力のいる現場で、最後まで皆をハッピーにさせてくれたヨンフンさんの姿に驚きました。そのプロ精神はどう培ったのですか?

半分は僕のもともとの性格、半分はこれまでの現場で苦労しながら学んだことです。歌にはテクニックが必要ですが、心のすべてを表現するためには指揮者やオーケストラは勿論、舞台に出ない裏方スタッフとも積極的にコミュニケーションをとっていく必要があります。気持ちが通じ合っていないと、聴衆は「何かがおかしい」とすぐに気づくんですよ。実際、過去に周囲とうまくいかないことがあり、辛い経験となりました。そうしたプロダクションの後では、挨拶もなく「またやろうね」といった会話もなく、ただ解散するだけ・・・そういう現場にはしたくないのです。

ーー技術だけでなく、心のパワーが必要なのですね。
僕は人が好きだから、その点はラッキーでした。毎朝目が覚めるたびに「何が起こるかわからないから、何があってもベストな対応をしよう」と思うんです。オペラは一人では作れないですからね。


ヴェルディ作曲《ドン・カルロ》
指揮:ワレリー・ゲルギエフ
管弦楽:マリインスキー歌劇場管弦楽団
演出:ジョルジオ・バルベリオ・コルセッティ

10月10日(月・祝) 14:00
10月12日(水) 18:00
東京文化会館

■予定される主なキャスト
フィリッポ2世:フェルッチョ・フルラネット
ドン・カルロ:ヨンフン・リー
ロドリーゴ:アレクセイ・マルコフ
宗教裁判長:ミハイル・ペトレンコ
エリザベッタ:ヴィクトリア・ヤストレボヴァ/イリーナ・チュリロワ
エボリ公女:ユリア・マトーチュキナ
※キャストは変更になる場合がございます。最終的な出演者は当日発表となります。

■入場料(税込)
10月10日(月・祝)14:00
S=¥45,300 A=¥38,800 B=¥29,100 C=¥21,600 D=¥12,900
10月12日(水)18:00
S=¥43,200 A=¥36,700 B=¥27,000 C=¥19,400 D=¥10,800

マリインスキー・オペラ 来日公演2016公式HP
http://www.japanarts.co.jp/m_opera2016

  • La Valseの最新記事もチェック

    • プッチーニ《蝶々夫人》 | 岸純信のオペラ名作早わかり 〜新時代のオペラ作品ガイド 第3回 
      on 2019/08/18 at 22:30

      text:岸 純信(オペラ研究家) 【あらすじ】 明治期の長崎を舞台に、大和撫子の蝶々さんが米国海軍士官のピンカートンと結ばれるが、帰国した夫はアメリカ人と結婚。彼を待ち続けた蝶々さんは、軍艦が戻ってきたその日、子どもも手放すよう言われて「抗議の死」を選ぶという悲劇の物語。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 《蝶々夫人 Madama Butterfly》は、日本人に「日本の美学を改 [&#8230 […]