名匠・高関健&東京シティ・フィルがヴェルディ中期の大作《ドン・カルロ》に挑む

左より:高関 健 ©大窪道治/小原啓楼/妻屋秀和 ©takafumi ueno/上江隼人/大塚博章/木下美穂子 ©Yoshinobu FUKAYA auraY2/加藤のぞみ

 創立50周年を迎え、記念年ならではの演目が連続する東京シティ・フィル。ことに常任指揮者の高関健とは特別な大作が続くが、9月のヴェルディ《ドン・カルロ》演奏会形式上演(全4幕、第2幕第2場、大フィナーレを除く全曲)は今年度の目玉のひとつとなる。

 同コンビは2023年秋のプッチーニ《トスカ》、今年3月のヴェルディ「レクイエム」、いずれも大成功に導いた。イタリアのオペラと声楽の名作に取り組んできた流れで、ヴェルディ中期の大作《ドン・カルロ》に挑戦するわけで、彼らのこれまでの積み重ねが集約されることになる。

 多彩なキャラクターが次々に現れ、政略と愛憎が絡み合う壮大なオペラで、複雑な要素がかみ合ったときの感動の大きさも比類がない。また、今回はスペクタクルな場面はカットの予定。諸事情はあるのだろうが、結果的には人間ドラマとしての濃度はむしろ高まることになりそうで、違う角度からストーリーを楽しむこともできそうだ。

 もちろん、歌手陣の充実は本作のマスト要件。ヒロイックな役を得意とするタイトルロールの小原啓楼をはじめ、フィリッポ2世に妻屋秀和、ロドリーゴに上江隼人、宗教裁判長に大塚博章、ベテランの重厚な男声陣。エリザベッタに木下美穂子、エボリ公女に加藤のぞみ、美声と芯の強さを備えた女声陣。幸いにもヴェルディ経験豊富な、盤石の出演者がそろう。好調の東京シティ・フィル・コーアの健闘も期待できる。初秋の午後、雄大な《ドン・カルロ》の世界を。

文:林 昌英

(ぶらあぼ2025年6月号より)

高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
第381回 定期演奏会
2025.9/6(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp