新国立劇場 ワーグナー《ワルキューレ》(新制作)

登場人物の関係と状況際立つ、装置と演出

©Karan Stuke/Finnish National Opera

©Karan Stuke/Finnish National Opera

 新国立劇場で制作が進行中の、故ゲッツ・フリードリヒ演出によるワーグナー《ニーベルングの指環》4部作。今シーズンのオープニングとなる第2作《ワルキューレ》で目を惹くのは、ゴットフリート・ピルツの舞台装置。昨年の《ラインの黄金》では具象物のほとんどない、メタリックな舞台が自由な演技空間を創りだしたが、今回は抽象性はそのままに、装置に各幕の状況を象徴するような、さまざまな変化が加えられる。夫婦の歪んだ関係や登場人物の不安定な情緒を表すかのように斜めに傾く、狭窄感に満ちた家の内部(第1幕)、ヴォータン(グリア・グリムスレイ)の槍の穂先のように先方を尖らせ、客席側に突き出された床や、登場人物に幼き日の回想を促す木馬の存在(第2幕)。そして第3幕では黒光りする床の上で、ギラつく白光に照らされて戦乙女たちの性的な乱舞が繰り広げられ、幕切れでは四方を大きく囲む炎がブリュンヒルデ(イレーネ・テオリン)の眠りを見守る。
 もちろん、こうした舞台装置が活きるかどうかは登場人物の演技にかかっている。舞台稽古が本格的に始動した9月5日の練習では、常に何かに怯えつづけるジークリンデ(ジョゼフィーネ・ウェーバー)、威圧感を漂わせたフンディング(アルベルト・ペーゼンドルファー)、虐げられた妻への共感が思わず態度に出るジークムント(ステファン・グールド)ら、三人の水面下に流れる感情の絡み合いをしっかり押さえて表現するよう、演出監修のアンナ・ケロ(フィンランド国立歌劇場)からさまざまな指示が飛んでいた。この場面をはじめ、舞台上の動きがこれからの練習でどのように練り上げられてゆくのか。期待して本番を待つこととしよう。
文:山崎太郎
(ぶらあぼ 2016年10月号から)

新国立劇場2016/17シーズン オープニング公演 《ワルキューレ》(新制作)
飯守泰次郎(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
10/2(日)〜10/18(火) 新国立劇場オペラパレス
問:新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999
http://www.nntt.jac.go.jp/opera