フェルッチョ・フルラネット インタビュー Vol.4

インタビュア:高橋美佐(イタリア語) 構成・質問:岸純信(オペラ研究家)

Q:演出についてです。ジョルジョ・バルベリオ・コルセッティ氏のこの演出は、いかがですか?
今年はじめてこの演出で歌いましたが、よく理解しています。個性の強い演出ですね。いわゆる「トラディショナルな」ものではないです。が、音楽とリブレットには忠実に仕上がっています。その点は私の姿勢と一致しています。近年は、思いつきだけの演出をする演出家も多くいて、そのようなことに私は納得できず、喧嘩にまでなってしまうこともあるのです。きちんとしたプロの演じ手に、音楽や脚本に書かれていないことをさせようとするからです。そのようなことはしかし、コルセッティ演出のドン・カルロに関しては、なかったですね。歌っていて気持ちのよいものでした。自分が関わった舞台の記録に、この演出が加わったことは、幸運と言えます。

Q:衣装はトラディショナルなのに対して装置はモダンですね。
モダンというよりは、正面から見た装置は様式的にはひじょうにまとまっており、シンプルですね。宮殿は照明で数通りの変化がつけられています。現在、このような方式の装置はそれほど珍しいものではありません。もし、私の好みを正直に申し上げてよいなら、シンプルさが美しい、というものよりは、まさにトラディショナルな様式が美しい、というものが最高なのですが。

Q:ルキーノ・ヴィスコンティのプロダクションのような?
そうです、あれです。2002年にローマで、あの演出で歌う幸運に恵まれました。ほかに同様の魅力を持つ演出としては、ウーゴ・デ・アナのもの。これは、トリノで歌いましたが、それですとか・・・あのときの指揮者はセミヨン・ビシュコフ氏でしたね。
とどのつまり、歴史的事実を再現する舞台の場合、解釈・美的要素ともに高水準に達しているものは、そう簡単に実現できるものではないにせよ、最低限、ストーリーに対して逆行するような手法をとってはならないだろう、ということです。嘆かわしい事実として申しますが、こんにち、そのような演出が後を絶たないのです。

Q:音楽特性についてすこし伺いたいのですが。ヴェルディのオペラの中には数作、もともとフランス語で書かれたものがあります。《ドン・カルロ》もそうですし、《シチリアの晩鐘》も、そうですね。
フランス語版オペラでしたら、「十字軍のロンバルディア人」の仏語改作版である《イェルサレム》も歌ったことがありますね。

コルセッティ演出《ドン・カルロ》/E.ニキーチン(フィリッポⅡ) C)N.Razina
コルセッティ演出《ドン・カルロ》/E.ニキーチン(フィリッポⅡ)
C)N.Razina

【Vol.5】に続く

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ヴェルディ作曲《ドン・カルロ》
指揮:ワレリー・ゲルギエフ
管弦楽:マリインスキー歌劇場管弦楽団
演出:ジョルジオ・バルベリオ・コルセッティ

10月10日(月・祝) 14:00
10月12日(水) 18:00
東京文化会館

■予定される主なキャスト
フィリッポ2世:フェルッチョ・フルラネット
ドン・カルロ:ヨンフン・リー
ロドリーゴ:アレクセイ・マルコフ
宗教裁判長:ミハイル・ペトレンコ
エリザベッタ:ヴィクトリア・ヤストレボヴァ
エボリ公女:ユリア・マトーチュキナ
※キャストは変更になる場合がございます。最終的な出演者は当日発表となります。

■入場料(税込)
10月10日(月・祝)14:00
S=¥45,300 A=¥38,800 B=¥29,100 C=¥21,600 D=¥12,900
10月12日(水)18:00
S=¥43,200 A=¥36,700 B=¥27,000 C=¥19,400 D=¥10,800

マリインスキー・オペラ 来日公演2016公式HP
http://www.japanarts.co.jp/m_opera2016

●チケット2次発売:6月25日(土)
詳細:http://www.japanarts.co.jp/m_opera2016/ticket.html
問:ジャパン・アーツぴあコールセンター03-5774-3040

〈歌曲(リート)の森〉 〜詩と音楽 Gedichte und Musik〜 第20篇  フェルッチョ・フルラネット(バス)
10年7日(金) 19:00 トッパンホール