二期会創立70周年 記念公演 シュトゥットガルト州立歌劇場との提携公演
東京二期会オペラ劇場《ドン・カルロ》新制作

伊語5幕版上演! 気鋭演出家&指揮者、充実のキャスト陣で描く愛と葛藤

上段左より:ロッテ・デ・ベア (c)Philipp Ottendoerfer/レオナルド・シーニ (c)Laila Pozzo/木下美穂子 (c)Yoshinobu Fukaya/aura.Y2
下段左より:竹多倫子 (c)深谷義宣/城 宏憲/樋口達哉 (c)深谷義宣

 「気高さ」に浸るならヴェルディの《ドン・カルロ》をお勧め。本来はフランス語の《ドン・カルロス》だが、いまはイタリア語での訳詞上演が多い。ただし、このオペラには5幕版と4幕版があり、筆者は「5幕版」を一押し。スペイン王子カルロとフランス王女エリザベッタが引き裂かれる名場面が5幕版第1幕であるからだ。婚約者同士が偶然に森で出会い、互いに愛情を募らせた途端、使者が「王女様は、王子様とではなく、国王様との縁組になります。受諾されますか?」ととんでもないことを伝達。戦を終わらせるための政略結婚として、人民の願いに応えて王女は「はい」と呟いて気絶する。立場の重みを知るがゆえの選択だが、結果、王子と彼女は共に、深い傷と葛藤を抱えつつも生きようとする。その清らかな心根に、今の日本も学ぶところが多いだろう。

 今回、東京二期会がこの《ドン・カルロ》5幕版を、横須賀、札幌、東京で公演。女性演出家ロッテ・デ・ベアがドレッシーな衣裳で人物像を掘り下げ、若手指揮者レオナルド・シーニが熱く振り進めるが、一番の期待はやはり、キャスティングの面々。王女役は温かい声音の木下美穂子と期待の新進・竹多倫子、王子役は情熱たっぷりの城宏憲とスタイリッシュな樋口達哉が競演。間に割って入る公女エボリではメゾソプラノの逸材、加藤のぞみと清水華澄、王子の親友ロドリーゴは、若手バリトンの清水勇磨と小林啓倫が競い合う。白熱のステージをお楽しみに!
文:岸 純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ2023年9月号より)

2023.9/30(土)13:00 よこすか芸術劇場
10/7(土)、10/8(日)各日14:00 札幌文化芸術劇場 hitaru
10/13(金)18:00、10/14(土)14:00、10/15(日)14:00 東京文化会館
問:二期会チケットセンター03-3796-1831
http://www.nikikai.net
※配役の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。

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