鈴木 学(ヴィオラ)

ヴィオラは“気持ちの声”が音になってくれます

©M.Okubo

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 東京都交響楽団のソロ首席ヴィオラ奏者を務め、わが国を代表するヴィオリストとして活躍を続ける鈴木学。美しい音色と端整な演奏姿で聴衆の信頼も厚い鈴木が、5月・6月に行われる「ヴィオラスペース」に登場し、マスタークラスの講師と、協奏曲のソロなどを務める。
 「ヴィオラスペース」は、今井信子の提案により1992年から開始され、今年で25年を迎える。多様な企画でヴィオラの魅力を伝え続け、3年前からは今井のほか、アントワン・タメスティが共同ディレクターに加わり、ますます新機軸が展開中。鈴木も主要メンバーのひとりだ。
「様々な新しい挑戦ができる場として、大きなチャンスだと思って参加しています。珍しいエロードの協奏曲を私が日本初演したのも2012年の『ヴィオラスペース』ですし(その後14年に都響の定期演奏会で再演)、他にはない貴重な機会を持てる存在です」
 第25回記念となる今回のテーマは「ヴィオラの誕生! バロックへの回帰」。
鈴木はJ.S.バッハの「カンタータ BWV 169・BWV49」および「チェンバロ協奏曲 BWV1053」が基になった作品、「ヴィオラと弦楽合奏と通奏低音のための協奏曲 変ホ長調」(W.フィッシャー編)で、小編成オーケストラを弾き振りする(6/1)。
「ベースになっている『BWV1053』はバッハの素敵な協奏曲で、弾き振りも楽しみな挑戦になります。実は今回、タメスティさんのアイディアで、全出演者が通常よりほぼ半音低いピッチ(A=415Hz)にする予定になっています。演奏は普段使っているモダン楽器と弦で行うので、それだけ弦の張力が下がって振動も変わり、それを歯切れ良く弾くには奏法も変わってくるでしょう。でも、そういったこと全てが新たなチャレンジであり、ヴィオラの新しい音色や表現の幅が広がる機会にもなるだろうし、とてもやりがいを感じています」
 また、鈴木自身もバッハに深い思い入れがあるという。
「以前リンツ・ブルックナー管で首席を務めていたとき、師匠であるトーマス・リーブル先生のレッスンを受け続け、主にバッハを中心にみてもらっていたんです。バッハの勉強はその後の古典派から現代作品にまでつながる基本になるということで、レッスンのたびに必ずチェロやヴァイオリンの無伴奏曲などを入れました。その経験が本当に自分の中ですべての土台になっています」
 最後に、鈴木の考えるヴィオラの魅力について聞いてみた。
「ヴィオラは他の弦楽器と比べても、より多様な音色を出せると思います。大きさも楽器によって違うし、同じくらいの大きさであっても全然違う音がするのが楽しいですね。中音域はまさに人間の声のイメージ。また、ヴィオラ独特のしっかり弓を乗せる弾き方…例えるなら“息を吹きかける”みたいなボウイングというか、自分の呼吸を弓に投げかけることで“気持ちの声”が音になってくれるのが魅力です」
取材・文:林 昌英
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年5月号から)

第25回記念 ヴィオラスペース2016
Concert Ⅰ バロック音楽の夜明け 5/31(火)
Concert Ⅱ バッハ・フェスト! 6/1(水)
各日18:30 上野学園 石橋メモリアルホール
問:テレビマンユニオン03-6418-8617
http://www.tvumd.com
※ヴィオラスペース2016の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。