【CD】プレリュード/マリオ・カルヴァン&白川妙子

 40年近くにわたりウィーン・フィルでヴィオラを弾いてきたマリオ・カルヴァンが、拠点のひとつとする日本でアルバムを作成。少しくすんだ深い光沢のある音色が、豊富な倍音をもって響き渡る。これこそがヴィオラの音だ!と再発見する思い。バッハ(3つの楽章)とレーガーの無伴奏曲での音響の広がり、確かな和声感、明晰なアーティキュレーション、かつ音の全く途切れない両腕のコントロール。白川妙子のピアノと共に奏でる小品は、旋律美を優しく親密に。彼の奏でる日本の歌は、共感豊かで温かい。アレンジも良く、新たなヴィオラのレパートリーになり得るもの。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2025年12月号より)

【information】
CD『プレリュード/マリオ・カルヴァン&白川妙子』

J.S.バッハ(B.ジョランナ編):組曲第6番 BWV1012/レーガー:無伴奏ヴィオラ組曲第1番/グラズノフ:エレジー/白川妙子編:五木の子守唄/山田耕筰(白川編):赤とんぼ/岡野貞一(白川編):朧月夜 他

マリオ・カルヴァン(ヴィオラ)
白川妙子(ピアノ)

マイスター・ミュージック
MM-4547 ¥3520(税込)


林 昌英 Masahide Hayashi

出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。