【稽古場レポート】神奈川県民ホール開館40周年記念、オペラ《金閣寺》

 12月5日(土)6日(日)、神奈川県民ホールで上演される、黛敏郎のオペラ《金閣寺》。三島由紀夫の原作をクラウス・H・ヘンネベルクが台本にしたこの作品は、ベルリン・ドイツ・オペラが当時、日本を代表する作曲家であった黛敏郎に委嘱し、同歌劇場で1976年に初演したもの。日本では、91年に岩城宏之指揮、ヴィンフリート・パウェルンファイント演出、主役溝口を勝部太が務め、東京フィルハーモニー交響楽団、東京混声合唱団で上演。その後、97、99年にザ・カレッジ・オペラハウスが再演した。今回は16年ぶりの日本での上演となる。

 今回の上演は、神奈川県民ホール開館40周年を記念し、地元・神奈川県横浜市出身の黛敏郎にスポットをあて、第22回神奈川国際芸術フェスティバル、神奈川県民ホールオペラシリーズ2015として、下野竜也指揮、田尾下哲演出のもと、主役は小森輝彦、宮本益光の二人が務める。

 去る10月28日に行われた稽古初日、および、11月24日の通し稽古を取材した。
(Photo:H.Yamada & J.Otsuka & M.Terashi/TokyioMDE )

 10月28日の稽古初日には、オペラ《金閣寺》の世界観を出演者スタッフが共有するため、まず、朗読劇《金閣寺》(台本:ヘンネベルク、訳:庭山由佳、修辞・脚色:長尾晃一、11/29神奈川県民ホールで上演)の台本の読み合わせが行われ、続いて、演出の田尾下哲から演出コンセプトの説明がされた。

模型を前に説明する田尾下哲(左)

模型を前に説明する田尾下哲(左)


【田尾下の演出コンセプト】
●書かれた物語をそのまま表現することに徹する。
●装置には象徴的なものを配置するが、それは様式的ではあるが、写実的ではない。半抽象的に描く。
●主人公溝口についてオペラでは、原作の吃音障害から手の障害へと変更している。原作では尺八を教えてもらいすぐにそれを習得するが、オペラだとうまくつながらない(ドラマトゥルクとしておかしい)ため、尺八の部分はカットしている。
●京都の夜のシーンは復活させる。道詮和尚と女が歩いているシーンを溝口が見つけるが、そのシーンは華やかに描きたい。
●物語『金閣寺』をどのように捕らえるか。この物語は異性愛。母性。父子の物語。美しいと思えなかったものを美しいと思うようになる溝口の心の動き。
●これまでの上演では、金閣寺は「書き割り」だったが、金閣が常に目の前にあるということが溝口にとってはプレッシャーになる。だから、舞台上に限りなく実在に近い金閣を建て、それがずっと舞台上にあるという設定にしたい。金閣は常にそこにある。動いたりしない。セリやスライドで動かすことはしない。
●建立からおよそ550年経って放火されたのが1950年。戦争や天災でも金閣は立ち続けていた。それが、たった1本のマッチで燃えてしまうカタルシス。それで溝口は火をつけた。金閣を燃やすのがどれほどのものだったのか。死んでも蘇ることで永遠を生きる不死鳥=フェニックスもおよそ500年ごとに蘇る。そこに三島的な美学を感じる。
●金閣がずっと舞台上にあるが、その前に黒い襖を置くことで部屋を作ったりする。
●描きたいのは溝口の心の葛藤。主人公の溝口以外の登場人物はほとんどしゃべらないが、溝口の人生を描くには、彼を通過していった多くの登場人物、特に女性の存在は重要、きちんと描く。溝口をあざ笑う声、それがトラウマとなって、溝口のなかに棲む。
●全幕休憩なしで上演することも考えたが、2幕2場雪のシーンまでで一度休憩を入れる。
●鶴川が溝口に性的に興味を持っている、それを知っている柏木がそれを邪魔しているところは見せたい。

 こちらは、11月24日に行われた通し稽古の様子から。

田尾下哲

田尾下哲

京都の夜のシーンを演技指導

京都の夜のシーンを演技指導

溝口:小森輝彦

溝口:小森輝彦

父:黒田博

父:黒田博

有為子:嘉目真木子

有為子:嘉目真木子

母:飯田みち代

母:飯田みち代

若い男:高田正人

若い男:高田正人

道詮和尚:三戸大久(中央)

道詮和尚:三戸大久(中央)

鶴川:与那城敬(左)

鶴川:与那城敬(左)

下野竜也

下野竜也

娼婦:谷口睦美(中央)

娼婦:谷口睦美(中央)

柏木:鈴木准(右)

柏木:鈴木准(右)

女:吉原圭子(右)

女:吉原圭子(右)

【関連記事】
●インタビュー 小森輝彦(バリトン) × 宮本益光 (バリトン)
●神奈川県民ホール・オペラ・シリーズ2015 オペラ《金閣寺》制作発表会から

第22回神奈川国際芸術フェスティバル 
神奈川県民ホール開館40周年記念 神奈川県民ホールオペラシリーズ2015

黛敏郎 作曲/三島由紀夫 原作/クラウス・H・ヘンネベルク 台本
オペラ《金閣寺》
全3幕(ドイツ語上演・日本語字幕付) 
上演時間 約2時間20分(第1部:55分-25分休憩-第2部60分)
2015年12/5(土)、6(日) 15:00神奈川県民ホール

【指揮】下野竜也 
【演出】田尾下哲
【装置】幹子 S.マックアダムス 
【衣裳】半田悦子 
【照明】沢田祐二 
【音響】小野隆浩
【ドラマトゥルク・字幕】長屋晃一 

【出演】
溝口:小森輝彦(12/5)/宮本益光(12/6) ※溝口役のみダブルキャスト
父:黒田博  
母:飯田みち代  
若い男:高田正人  
道詮和尚:三戸大久  
鶴川:与那城敬   
女:吉原圭子  
柏木:鈴木准  
娼婦:谷口睦美  
有為子:嘉目真木子

【合唱】東京オペラシンガーズ   
【管弦楽】神奈川フィルハーモニー管弦楽団

S10,000円(Sペア19,000円) A8,000円 B6,000円 C4,000円 D3,000円
問:神奈川県民ホール事業課  045-633-3798
http://www.kanagawa-kenminhall.com/kinkakuji/