東京フィルハーモニー交響楽団 「第九」特別演奏会

伝統を打ち破る、若き天才の「第九」

アンドレア・バッティストーニ ©上野隆文
アンドレア・バッティストーニ ©上野隆文

 暮れになると無性に聴きたくなるのがベートーヴェンの「第九」。12月も半ばを過ぎると、どのオーケストラもこぞって「第九」を演奏する。
 そんな「第九」ラッシュのなかで、今年大きな話題を呼びそうなのが、イタリアの新星アンドレア・バッティストーニと東京フィルのコンビだ。1987年生まれの若手ながら八面六臂の活躍をくりひろげるバッティストーニは、首席客演指揮者を務める東京フィルとともに、これまでにもたびたび名演を生み出してきた。記念碑的な大作である「第九」となれば、その期待感もいっそう高まろうというもの。
 実はバッティストーニにとって「第九」はベートーヴェンの9つの交響曲のなかで唯一、これまでに指揮した経験のない曲だという。日本と異なり、ヨーロッパには年末に「第九」を集中的に演奏する習慣はないので、これは決して驚くことではない。それにしても若き天才指揮者の「第九」デビューを東京で聴くというのは、ワクワクするような体験ではないだろうか。
 バッティストーニによれば、「第九」とは「完全に常軌を逸している」曲であり、ベートーヴェンの魅力とは「跳躍やスピード感、刺激的な響きにある」という。どうやら、これまでに私たちが慣れ親しんだ「第九」とは一味違った演奏が誕生しそうだ。語り草となるような、強烈なインパクトを持った「第九」を期待したい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年12月号から)

12/18(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
12/19(土)14:00 サントリーホール
12/20(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
http://www.tpo.or.jp